ちょっとした嫌がらせレベル
ここ迄で限界でした。
遅くなった上に短くて申し訳ない。
白ヤギさん黒ヤギさんなら読まずに食べても問題無いんだろうが、自分、人間な上に貴族なんで、それやると色々面倒事が増えるんよね。
なんで、チマチマお断りのお手紙を書くとです。遠回りで分かり難い文章で、のらりくらりと用件を躱す様な、海で生まれて川を遡り、産卵する為に海へと戻ると言う鰻じみたお手紙を。
これ返しても、また手紙を送って来るだろうけど、家の国に『秘密にね?』みたいな事やってる以上、表立っての抗議は出来んだろう。
だとすれば、次に行う行動は、俺の弱みを探るか、こちらに居る兵士を寝返らせるか……いや、元々ファルトヘルト王国の兵士なんだし、“寝返る”は可笑しいか。まぁ、人雇って直接兵士に声かけるってぇ所か。
だとしても、今回の事で自分の意思でこちらに残ることを決めたんだから、その辺は中々靡かんだろう。
それ位、自分の意思で決めたって思ってるのは、重要なんよね。その辺のところ突き詰めると、選択肢を無くす事で、一見自分で決めたように見せかけて思考を誘導とかも出来るんだがね。あれだ、手品とかのミスディレクションもそんな感じの技術だった筈。確か。
ただ、そうだったとしても、帰郷に応じる人間も居るだろう。例えば、家族や恋人なんかを盾にされたりとかな。
だとしても、そう言った人間が国に帰った時に、例え家族やら恋人が無事だったとしても、『この国は、自分の御大切な人を人質として使う』ってぇ事実は、記憶に刻まれちまう。
そうなれば国に対して心の底からの忠誠ってのは取り難くなるだろうさ。
ましてや、こっちでは思考の自由が有ったんだ。常に『脅されるかもしれない、人質を取られるかもしれない』とかって思いながら暮らすのは、酷くストレスに成るだろう。
もしかすれば、家の領に亡命を考える人間も出てくる……かも知れない。
まぁ、そこまで万事が万事うまく事が運ぶなんて事は無い。ただ、ファルトヘルト王国の内部に不安の種位は撒かれるだろうがね。




