いっそ白ヤギさんに食べて貰いたい
「いや、そもそも国外追放と言う形だと認識して居たのだから。戻る気など無いですよ」
「……俺は、ほとぼりが冷めるまで預かってくれって事で言われたんだが?」
スターリンの話を聞く限り、こっちの方へと言っていた事との齟齬が酷い。これってアレか? 俺がコイツ始末したとしても、こっちが襲われたとしても、その事で処刑されるってぇ前提だったって事か? 何と言うか、第二夫人から聞き伝えられてるお国事情を加味しても、一寸酷過ぎね?
聞く限りでのファルトヘルト王国ってのは、基本王侯貴族至上主義で、その上で男性優位社会だってのは分かった。
ただ、その主義主張は所謂差別主義とセットで、平民は貴族の奴隷扱いだし、男女のソレも同じ。だからこそ、瑕疵なんかには厳しい目が向けられる訳で、家の第二夫人も王女の時は蝶よ花よと育てられては居た様だけど、それでも基本的には高価な装飾品扱いだったみたいなんよね。
つまりは利用価値があるから大切に扱われていた的な。それでも同じ王族の王様はもちろん兄弟からも、三歩下がって影を踏まず的な扱いだったっぽい。
滅ぼしちゃダメかな? そんな国。まぁ、第二夫人からも『もう気にして無いから』とは言われてるんで手は出さんけど。
まぁ、それで言えば公爵の方が滅殺対象としては上か? ただ、むしろあっちは、最早関わる気もない位に関心が持てんのだけんども。
それはそれとして、そもそも瑕疵が出来ちまった所に、追加で醜聞まで起こしたスターリンは一族にとっても、最早厄ネタでしか無かった訳だ。ただ、それでも利用価値があるならってぇ事で、家の領に送られた訳だけど、それでも期待した成果を得る事が出来なかったってえ感じか。
何で、そんな話をしてるかと言えば、ファルトヘルト王国から、こっちに返答が有ったからなんだわ。
「まぁ、予想通りだな」
「お恥ずかしい」
眉根を寄せる俺に、嘆息しながら、スターリンがそう返す。
要は『そっちの領地に着いたのなら、それ以降はそちらの責任で行ってくれ、だから兵士は返せ。ついでにこちらに迷惑を掛けたんだから、目録の品と金もな』って感じ。
確かに受け入れたんはこっちだけど、だからと言って必要な情報を隠蔽してたのは事実で、こっちに非が有るとなんざ、全く思って無いんだがね。
なんで、そう言った恥知らずな内容だったと知らせるついでに、スターリンの方に事情を聞きに来た訳だ
で、自意識も取り戻してんで、今後の身の振り方も聞いてしまおうって思ったんだが、当のスターリンにはお国許に戻るってぇ気は無いらしい。
まぁ、その辺は本人の意思次第だから構わんのだがね。因みに、兵士達にも聞いてみたんだが、帰りたいって兵士も半分くらい。ただ、そっちに関しては、この返答だと返してやるってぇ訳には行かないって感じだわ。
それよりも俺が不快に思ったのは、ついでとばかりに付随された手紙の『そちらにお邪魔してる王女は、こちらの王家の期待を果たせなかったのだから、その慰謝料を要求する』って感じの内容。王女ってのは、まぁ、第二夫人の事だわな。
いや、ホント、滅ぼしちゃダメかな?




