納得してくれるまでやめない
遅くなりました。
申し訳無い。
残らされた兵士からの反発は大きかったが、自分達の行いが『常識的にどうだろう?』って事だったってのも有って、一時的に大人しくはなった。まぁ、自分達じゃぁ抑えきれなかった甥っ子君をあっという間に無力化した俺の戦闘力を見ていたってぇ事も有って、大体の兵士が、それでも不満を抑えたんだがね。
中には、『せっかく祖国の役に立てる機会なのだから、大人しく受け入れて居れば良いのだ』的な阿保を口走った輩も居たんで、そう言った兵士はその場で放り投げ、叩き付け、ぶん回し、投げ飛ばしを繰り返してやったら、10セットもしない内に大人しくなった。真っ青になって。
一先ずは、家の兵士達に監視は付けさせつつも自由にさせてはいたんだが、どこからか“治療”の事を聞きつけて来て、実際に見れば文句を言って来た。
まぁ、貴人牢でやってる事は、別に口止めしてる訳じゃぁ無いし、見られた所で拙いもんじゃない。だって治療行為だし。
口で説明して納得しなかった兵士には、取り敢えず、それが治療行為だって事を証明する為に、牢の中に引き摺り込んで実際に体験して貰った。
さんざん格闘行為をした上で、最終的に体も精神的にもスッキリすると言う現象に、狐に詰まれたような様子で、しきりに首を捻ってはいたが、それでも納得してくれた様だったので、良かった良かった。
決してプロレス技を掛けられ続けるのが嫌だから適当こいてる訳じゃぁ無いのは、その後、観戦しに来る様に成ったり、中には参戦する兵士も出て来た事で証明されていると言って、過言では無いだろう。うん。
まあ、参戦を許可したのを見た家の兵士も、同じ様に参戦したがったので、そっちも許可をする事にした。
とは言え、何か甥っ子君の治療が終わった後でやるってのが常になっちまったんで、その分時間を食っちまう様に成ったがね。
まぁ、甥っ子君の治療を見て、その興奮が冷めやらぬが故に参戦を希望するってぇ流れなんで、しょうがないっちゃぁしょうがないんだが。
てか、それ以外の時間に挑んで来る者が居ないのは何でじゃろか? あれか? 俺も何と無く、治療をした後の時間だとプロレス技しか使わないが、それ以外だとバリトゥードに成るからか?
まぁ、良いけど。
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「大変、迷惑をお掛けしました」
いつもの治療の後、大の字で転がっていた甥っ子君がポツリと漏らした。
「正気に戻ったのか?」
「はい」
むくりと上半身を起こし、その状態で俺の方をじっと見る甥っ子君。さっきまでの俺とのプロレス……ではなくて治療のせいでか、うっすらとかいた汗。褐色のワイルド系イケメンな所為で、無駄にフェロモンが有りやがる。
そんな風に思って、甥っ子君を眺めていたんだが、そんな俺の視線に、甥っ子君がフイッと視線を外した。
何よ。
「「「きゃーっ!!」」」
え? 何? 唐突に聞こえたメイド達の声に思わず視線を送るが、その娘達は、何か俺と甥っ子君の方を見ながら、キャイキャイと耳打ちし合っている様子。
いや、ホント、何?
「薔薇の香りぃ」
何が!?




