遊んでいる訳ではない
遅くなりました。
申し訳ない。
例えどんなに理性が崩壊してたとしても、回し蹴りで脳を揺らされ、ラリアットでぶっ倒され、一本背負いで叩き付けられ、タックルで転がされ、鉄山靠で吹っ飛ばされなんて事を毎日続けて居れば、多少は警戒って物をする事が出来るらしく、今日は俺が入って来たってのに、飛びかかって来るって事はしなかった。
それでも、何とか隙を突いて外に出ようって気概はあるらしく、俺の挙動を見つめつつ警戒しているってぇ状態。
いや、これは治療の甲斐あって、少しは元に戻ってると見た方が良いのか? って、俺、甥っ子君の元の状態なんて知らんのだけんどもなぁ。
まぁ何にせよ、今までと違う反応が引き出せているのも事実。少しは進んでいると思う事にしよう。手加減はせんが。
と言う訳で、今日も全力治療行為。様子を見てるってぇか、隙を窺ってるってのは、今まで考えなしに突っ込んで来て返り討ちにあったってぇ経験からだろう。
「けどな」
俺は、一足飛びで甥っ子君の目の前へ。その獣じみた前傾での低姿勢は、何時でも飛びかかれる様にってぇ事なんだろうが、それは悪手なんだわ。
前傾姿勢でってぇ事は、頭が低い位置に、それも体の前の方へと出てるってぇ事だ。そんなもん。狙ってくれって言ってる様な物だろうに。
小細工なしで右アッパー。態々どうぞと差し出されたソレを狙わないなんて理由はない。狙い違わず顎にクリーンヒットしたそれで、バク中気味に吹き飛び頭から落ちる甥っ子君。そのまま後ろに倒れ込んだ所で、足首を取って回転する様に甥っ子君の足を曲げさせ、そこに自らの足絡め、そのまま甥っ子君の足を脇に抱える。所謂足4の字固めへと。
足4の字固めはひっくり返されてリバース4の字へと移行されれば、俺がダメージを受ける事に成るとは言われているが、しかし、そんなへまをする事など有りはしないのだよ。さぁ、思う存分、脚を極められれば良いわ!!
ジタバタとバタつく甥っ子君だが、俺がそれを離す事など有りはしない。何故なら、コレは治療行為だからだ!! そう、あくまで治療目的。暴れても押さえつけなければいけないのである!!
『【嘆息】その割には随分と楽しそうですが?』
うん。プロレスごっこも久しぶりなんで、ぶっちゃけ楽しい。




