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ワイルドだろう?

 遅くなりました。

 申し訳無い。

 ガシャガシャと、その身に巻き付けられた鎖を引き千切らんばかりり軋ませながら、10人近い兵士にやっとと言った様子で引っ張られ、その()()の馬車から引きずり出されたのは、野獣を思わせるしなやかな筋肉を纏った野性的な雰囲気の美少年だった。

 鎖やら手枷やら足枷やらをしてはいるものの、着ている服自体は上等な仕立てだし、恐らくはコレが甥っ子君なのだろう。


 向こうの王家の使者らしい文官が、一寸焦りながらも挨拶をしてくれているが、ちょっと、耳に入ってこないわ。


 ……いやもう、何処からツッコんで良いやら。

 最低限ってぇ話の割には、馬車だけで10台が連なってるのも、兵士が5、60人から付いて来ているのも、コイツの為ってかコイツの所為って事? これ、護衛ってか護送だよね。

 そもそも、家紋と鉄格子付きの馬車ってさぁ。


「……もしかして、ファルトヘルト王国の公爵家だと、これがむしろ普通なんかね?」

「違います」


 俺の呟きにジョアンナさんがツッコミを入れる。

 うん、第二夫人(ママン)の甥っ子、公爵家の子息らしいよ? ツマリは王太子妃の実家の方の兄妹の息子さんって事。


 てか、猿轡(さるぐつわ)まで咥えさせられてるんな。何この対猛獣仕様。いや、猿轡されてても唸り声が凄いんじゃが、口塞いでる意味無くね!?

 そう言えば、ギャグって言葉の語源って、『黙らせる』って意味での猿轡から来てるらしいね。って、こたぁ、前世で『オヤジギャグ』でその場の人間が黙るのって、正しい使われ方だったんな。


 っと、甥っ子君が予想外過ぎて、一寸思考が飛んでたわ。


「え? アレを受け入れなきゃ成らんの?」

「御免なさいね? トールちゃん」

「いえ、母上が謝る様な筋では無いですから」


 まぁ、プライベートだとは言え、一応にも隣国王家からの依頼ではあるし、こうやって、第二夫人(ママン)と一緒に、領主館前で出迎えた訳だけど。


 これ、教育以前に調教が必要な案件じゃね?


 俺がそんな風に考えてると、一瞬、動きが止まった甥っ子君が、次の瞬間、こっちに向かって猛然とダッシュする。

 鎖を掴んでいた兵士さん達も、虚を突かれ体勢を崩した。が、ある程度は予測していたのか、何人かが()()()()()甥っ子君の前に立ち塞がる。って、いや、抜刀て!!


 だが、鎖が一瞬緩んだ隙に、甥っ子君は手枷を引き千切り、拘束していたその鎖を武器として、兵士を薙ぎ払う。


「うをぉぉぉぉぉんあああぁぁぁぁぁ!!!!」


 うを? 何て言ってるかは分からんが、情欲にまみれた濁った瞳には何処か見覚えがある。いや、甥っ子君(コイツ)じゃ無く、別の魔族のでさぁ。

 俺はチラリと周囲を見る。今日はまぁお出迎えって事で、第二夫人やジョアンナさん以外にも俺の家族達と、館のメイド達も玄関アプローチに出て来ている訳だ。うん。みんな美人美人。


 甥っ子君は兵士を薙ぎ払い、こちらに走って来ようとして、しかし、向こうの兵士達に鎖を再び捕まれ、後ろからタックルを受け、しかし倒れる事は無く、速度こそ遅く成ってはいるが、それでも着実に歩みを進めて来た。


「凄いリビドーだよなぁ」


 つまりは、そう言う事なんだろう。だがな、家の娘達を(よこしま)な目で見るんじゃねぇよ!!!!

 30人からの兵士に抑え込まれながらも、しかし、人外の膂力で加速を始めている甥っ子君。そして、その均衡は破られる。甥っ子君の勝利と言う形で。

 振り払われた兵士が倒れ込み、甥っ子君(うえたケダモノ)が解き放たれた。


 メイドの娘から、悲鳴が上がる。が、やらせる訳ねぇだろうが!!


 俺は一足飛びでメイドと甥っ子の間に割り込むと、その顎先を狙って回し蹴りを放つ。

 と、脳を揺らされ、一瞬で気を失った甥っ子君が、慣性に従って倒れる様に突っ込んで来る。が、俺はその顔をアッパーでかち上げ、胴体に蹴りをぶち込んだ。

 甥っ子君は吹き飛び、地面をバウンドしながら、馬車にぶち当たりなぎ倒して、ようやっと止まる。


 おっと、教育する前に蹴っ倒しちまった。


「正当防衛だよな?」


 俺がそう言うと、向こうの倒れ込んでいた兵士達も、唖然とした表情のままコクコクと頷いた。

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― 新着の感想 ―
…教育って去勢の事?(遠い目 タマタマ取る方じゃ無いゾ?(ぉ 威勢を押し去るほうネ にしてもトンだ従兄弟様だ事… とある魔族も悦びそうね(溜息
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