母の甥っ子なら自分からは何になる?
隣国のファルトヘルト王国から来た手紙を読ませて貰ったんだが、内容的には『エスパーデル公爵と拗れて屋敷を出たと聞いたぞ? それを聞いた時には、役に立たない娘だと思ったが、その代わり【ドラゴンスレイヤー】の辺境伯と懇ろになったんだってな。それは褒めてやろう。それでだ、家の甥っ子がヤンチャして、ちょっとやらかしたから、ほとぼりが冷めるまで預かって貰える様に取り成しておけ』って感じ。
懇ろて。
いや、まぁ、傍から見たらそんな感じに見えるんだろうけんども。
「で、国王の甥っ子が来たら、再起不能にしとけば良いの?」
「国王様ではなく王太子様の甥っ子ね。まぁ、私の、でもあるのでしょうけど、ただ、私は話に聞いてるだけで、本人には会った事は無いの。でも、再起不能は勘弁してあげてね? 外交問題にしそうだし」
外交問題に成らない様だったらオッケーって事ね。つまりは、その前に教育しておけば良いって事やね。
そもそも国外に逃がさなきゃならん程の馬鹿やらかした子供を受け入れろって、どんだけこっちを下に見てるんだか。いや、俺は元庶民で辺境伯でしか無いから、王族に見下されても仕方ないかもしれんが、第二夫人は、そもそも身内だった訳じゃん? 確かに現状の身分とすれば公爵家の第二夫人って事に成るんだろうけどさ、この見下し方って、それだけが理由って訳でもないよね?
まぁその辺は、隣国の王家じゃ無く、公爵家に嫁がされたってぇ時点でお察しなのかもしれんが。これで公爵が、隣国まで名声が鳴り響く様な大業を成したってんなら、また別なのかもしれんが、そんな話はとんと聞かんからなぁ。
つまりは、単純に『こちらから、積極的に攻撃|はしませんよ。何せ肉親が居ますから』って言う約束に対する保証としての役割の政略結婚であり、アピールでありパフォーマンスでしかなく、自分達に都合が悪ければいつでも見捨てて反故に出来るってぇ程度の、軽い代物でしかない。
まぁ、要は生贄な訳だ。
そんな話はさて置き、ほぼ命令調で手紙が書かれている事を考えると、既にこれは決定事項であり、第二夫人の方には拒否権は無いんだろう。
「まぁ、来ると言うなら受け入れはしますよ? その代わり、治外法権だとか外交特権みたいな物は認めませんけど」
「御免なさい。迷惑を掛けてしまって」
まぁ、この程度で第二夫人の心証が良くなるなら、別に構わんさね。




