世に頭痛の種は尽きず
色々と考えが纏まらず考え込んでいた所為で遅くなりました。
申し訳ない。
ヘンリエッタ王女に『【闘神化】見せるよ~』とかって約束してから数日が経った。いや、まだ見せられてないんよ、これが。
勿体ぶってるってより、予定が合わないからってのが大きい。見せるんなら、外部への情報を秘匿出来て、広い場所じゃ無きゃ無理だけど、そう言った所に行く為には、1、2時間でちょろっとってぇ訳にゃいかんし、俺だって区画整理してる場所の建物の建築に関する確認やら、新しく商売を始める連中の嘆願書やら必要書類の許可やら、新規の流入者の確認やらで忙しいし、ヘンリエッタ王女だって、教会の設立関係で、毎日の様に面接や面談してるからなぁ?
そう言った理由で、まだちょっと見せられてないんだがね。まぁ、その辺りはヘンリエッタ王女も納得してくれてる様なんで、有難いが。まぁ、女騎士は良い顔しとらんのだがね。
それはさて置き、そんな風に忙しく仕事をしている俺の所に、第二夫人が訪ねて来た。
第二夫人が俺の執務室を訪ねて来るってのはかなり珍しい事なんだわ。基本的には晩餐は一緒に食べてるし、その間に雑談とかはしてるからな。
にも拘らず、こうして執務室にまで訊ねて来るってぇ事は、よっぽど火急の要件なのかとも思ったんだが、どうにもそう言う雰囲気でもない。ただ、専属侍女さんも、第二夫人を気づかわしげに見てるんで、厄介事だってのは理解できるんだが……
俺と犬達が、揃って首を傾げていると、第二夫人が溜め息と共に『ごめんなさいね』と言葉を発した。
「えっと? 何がですか?」
「あまり、私にとって愉快なお話ではないからと言うのも有るけれど、トールちゃんにとっても有意義と言う訳ではないお話だから」
「……取り敢えず、お話をお聞きしても?」
俺がそう言うと、第二夫人、大きく、とても大きくため息を吐いた。
「隣国のファルトヘルト王国が、この領地で人を預かって欲しいって打診して来たのよ」
「人を預かって欲しい?」
「ええ」
ファルトヘルト王国って言えば、つまりは第二夫人の祖国だ。ルールールーの方から何も言われて無いって事は、国王陛下からは、何の連絡の無いって事で、つまりは、第二夫人に、全くのプライベートで、連絡をして来たってぇ事に成る。
それで『人を預かって欲しい』とか、厄介事以外何物でも無いって事だわ。要するに、『国王陛下には内密に』ってぇ、枕詞が付くってぇ事な訳だからな。
「……隣国からですか、今更?」
「ええ、そうなのよ」
第二夫人が三度溜め息を吐く。第二夫人が危機に瀕してた時、その祖国様は何の助けもしてくれなかった。市井に噂が広がる程度には秘密と言う事でもなかたんだから、隣国とは言え身内であろう人間が、『全く知らなかった』ってぇ事は無いだろうさね。
それでなくとも公爵領にスパイ位送って居ただろうし。
建前上、政略でとは言え嫁がせた訳だから、その時点で第二夫人は文字通り公爵家の人間に成ったとは言える。その時に王家からも抜けてる訳だしなぁ。
だからと言って、完全に縁が切れたってぇ訳じゃ無いだろうにな。
恐らく、その状態で第二夫人に“何か”あった場合、それを弱みとして貸しにするってぇ考えも有ったんだろうよ。
国王陛下も、その辺りは分かってて、公爵にゃあ、色々と提言はしてたみたいなんだが、『これ以上は内政干渉です』とか言われれば、他の貴族との兼ね合いも有って、それ以上の口出しは出来なかったっぽい。
その辺は兎も角、第二夫人が困ってたってか、生命の危機にあった時にすら連絡を寄こさなかった隣国が、第二夫人が立ち直って随分と経ってから連絡を寄こす。それも『人を預かって欲しい』なんて内容じゃぁ、そんなもん厄介な事にしか成らんだろうよ。
まぁ、それが分かってるから第二夫人も困ってたんだろうけど。




