喰らい尽くす光
ファティマ達が頭部にINし、物理的に接続される。
『【快楽】うんっ!!』
……まぁ、お約束。俺から【プラーナ】を受け取ると気持ち良いらしいし。取り敢えずここはスルーして、【プラーナオリジン】を増幅して貰う。
それを別に増設した【プラーナオリジン】を蓄える為の蓄電池的な物に接続。循環増幅炉として形成。俺自身が精製循環している【プラーナオリジン】の出力を維持しつつ、一発の威力を上げる為の別回路を形成した。
現状、俺が【プラーナ砲】で攻撃をし続けて居る事で、落とし子の生成を抑止出来ているってぇ事もあるんで、攻撃自体は中断が出来ない。
いや、アベルが無双してるから、ちょっとくらい中断しても構わん様な気もするが、油断は禁物。相手は邪神だ。出来る手は全て打っておいた方が良いだろう。
特に、あまり長期での戦闘は避けたいからな。
邪神の方も、俺が出力を上げた一撃を狙ってるってのは分かってる様で、エネルギーを消費させる為にか、こちらに攻撃を仕掛けて来る落とし子の数が増えている。が、それは犬達を始め、家の家族達が阻止してくれている。
まったく、頼もしい家族だよ。
プラズマ黒炎での手加減は、難しいらしく、ソレでの攻撃はしてこない。そうなると向こうの攻撃手段は黒炎と落とし子の二通りだけと言う事か? いや、早計か。単純に、俺達を飼い殺しの状態に出来る物がその二つだけってぇ可能性の方が高いのか。それ以外はどれを使ってもオーバーキルにしか成らんとかね。
まぁ、有り得る話だわ。仮にも相手は神様。気象やら地形に干渉されるだけでも割と手も足も出ないからな。
『【謙遜】【闘神化】をしていれば、どうと言う事は無いでしょう』
「それだと、俺とファティマ以外全滅じゃんよ」
『【天啓】私とマイマスターでアダムとイブに!!』
何、すっとぼけた事言ってるんだ? このメカっ娘。その言い方だとおまいがアダムで俺がイブなんじゃが? そもそもアダムとイブに成れるわきゃ無いじゃろが! ……成れないよな? てか、アダムとイブとかって、あるのか? この世界。
『【否定】私はマイマスターの記憶領域からも情報を引き出せますので』
そう言えば、俺の考えとかも読めるんだったな。てか、まだ充填的には70%程度か。少し焦れるな。【プラーナ砲】を維持しつつ、【プラーナオリジン】の増幅充填。眼下では、家の家族&冒険者と落とし子達との押しつ押されつの戦い。時折、俺の方にも攻撃が向かって来るが、それらはアベルがインターセプトしてくれている。
こっちとしても作業タスク的にいっぱいいっぱいなんで、眼下の戦いには手を出す余裕なんざ無い。彼らの奮闘を期待する以外は出来んのよ。せめて、【回復】させる事が出来れば良かったんだが、俺の【回復】は、少なくとも対象の身体に手を触れて居なければ効果を及ぼす事が出来ない。
また、吹き飛ばされた冒険者が1人。懸命に戦ってくれているのが分かるが故に、自分の力量の無さが歯がゆい。
だが、俺の今できる事は【プラーナオリジン】を濃縮加速精製する事だけ、ならばそれを全力でやるしかない。
濃縮、濃縮、濃縮、濃縮。加速、加速、加速、加速。精製、精製、精製、精製。濃縮、濃縮、濃縮、濃縮。加速、加速、加速、加速。精製、精製、精製、精製。
闘神体が過熱し、周囲の空気に陽炎が揺れる。それでも頭の芯の部分だけは冷静に、平静を保つ。
充填率85%。闘神体の視線で、こちら側を覗く邪神を見る。あぁ、成程、俺達の行動を観測しているのか。俺がどう動くか、この状況をどうひっくり返そうとしてるのか。そして自分はそれをどう覆し、事態を長引かせようか、と。
悪いが、そちらの都合に合わせてやる事は出来んのよ!!
充填率は未だ100%に満たない。だが、俺がどれだけ【プラーナオリジン】を練り込んだと思う?
態々、ファティマ達の充填と、切り離したのは何故だと思う?
「俺の方の【プラーナ】も、合流させるぞ!! ファティマ!!」
『【了解】いつでもどうぞ!! マイマスター!!』
ファティマの方で充填された【プラーナ】86%に、俺が循環させ続けた【プラーナ】をつぎ込む。
可笑しいとは思わなかったか? 俺は循環させ続けて居るにも拘らず、【プラーナ砲】の威力に変化が無かったって事に。
俺とファティマが合体した事での警戒はしてたようだが、具体的に何をやっているのかは、分からなかっただろう?
「こっちの準備が、既に整っていたなんて、思っても見なかっただろうなぁ!? 邪神さんよぉ!!」
飽和状態と言って良いエネルギーに、更にエネルギーをつぎ込むと言う行為。それは、エネルギーを励起させるに等しい行為。
つぎ込まれた【プラーナオリジン】によって、爆発的に増大したエネルギーが、その唯一の解放先である【プラーナ砲】から解き放たれる。
その凄まじい赤白光の奔流が、全てを喰らい尽くすが如く、黒炎もろとも邪神の潜む罅を飲み込んだ。




