あっちもこっちも伊達じゃない!!
【プラーナオリジン】を循環加速させ、【プラーナ砲】へと充填する。濃縮し、密度を増した【プラーナオリジン】が質量を持つまでに圧縮され、臨界状態に突入した。
邪神……レヴィアタンと呼ばれて居たか。果たして、その名が本当の呼称なのか、信者がそうだと信じているだけの名なのかは知らんが、終末の三大魔獣の一体の名前だとか、良い趣味をしているわ。
だとすると、ベヒモスとジズも居るって事かね? まぁ、どうでも良いが。
目標と成る空中の罅を、その向こうでのたうつレヴィアタンをターゲットに収める。トリガーに掛けた指に力を入れ、それを引き絞った。と、同時に赤白色の光が【プラーナ砲】から放たれ、迸る。
だが、罅からゴウッと黒色の炎が放たれ、それと激突し、拮抗する。
「なっ!! プラズマかっ!!」
そう言えば、前世の伝承でも、レヴィアタンは炎を吐くとか言われてたっけか!! って言うか、海生生物の筈なのに、炎って、どうなのさっ!? むしろ、自分の住んでる所を蒸発させるって、どういう事だってばよっ!!
で、無くて。今の一撃には、一発で空間の罅なら消滅させられる程の威力を乗せたって言うのに、それを防ぎきるとか、どんだけのエネルギー量よ!!
クソッ、このプラズマ、どう攻略する? 取り敢えず、今の持続状態のビームだと初期のそれよりも威力では落ちちまうんよね。それはまぁ、当たり前だろう。最初の一発は、溜めて置いてからのショットで、今は継続して【プラーナオリジン】をつぎ込んでるってぇ状態なんだからな。
逆に言えば循環加速圧縮を今以上に行って威力を高めれば突破できるのかもしてないが、それでも向こうにはまだ余裕がある様に感じる。
いや、実際に、“拮抗”を演出しているのかもしれない。どうやらアレの喰らっている【オド】は嫉妬とか、それに近い感情から発せられる物らしいからな。今のこの光景を見ている者達が、自らの非力さに打ちひしがれ、そして強大な相手と対峙できる物に対して羨望し、妬み、嫉み、嫉妬する為の演出をしているってぇ所だろう。
だからこそ、この状態を長く続けさせちゃぁいけない。おそらくエネルギー的に言えば、俺達の方が総量的に低く、長期戦に成れば絶対的に不利だろうし、現状、ラミアーが守ってる観客以外の、闘技場内の冒険者、闘技場外の住民に邪神の影響が出て来るだろう。
それに、あまり長引かせ、『つまみ食い』が『実食』に変わっちまったら……
「ファティマアァァァァッ!!!!」
『【了解】イエスッ!! マイマスター!!』
合体状態のファティマを呼び寄せる。この闘神体は、言わば俺のイメージの産物だ。なら、出来る筈だ。
俺のイメージに違わず、闘神体の頭部が開き、それによって俺の考えを察したファティマが、そちらへと向かって飛ぶ。
「このまま接続させて貰うぞ!! ファティマ、オファニム、ケルブ!!」
『【了解】イエスッ!! マイマスター!!』
こんな風に部品扱いしちまうのは、俺としても心苦しいが、今は、ファティマ、オファニム、ケルブの【プラーナ】増幅能力が欲しい。
悔しいが、現状の俺では出力的に邪神に及ばん!! 現状を打開する為だ!! 悪い!!
『【許諾】お気になさらず、マイマスター! むしろ、マイマスターと繋がれるのはこちらとしても本望です!!』
ファティマ達の砲撃が止まった為か、一部の落とし子が、こちらへと三叉戟を向ける。クッ! やっぱり、ファティマが抜けると、手数的にかなり不利になるって事か。イブもジャンヌも一度に発射する魔法の数は百数十を超えるってのに、それでもか!!
いや、イブ達や犬達、それに冒険者連中も頑張っては居る。だが、それ以上に落とし子達のタフネスが上がって居やがる。これも、長引かせる為の戦法か!! 本当に厄介だな!! この邪神は!!!!
と、未だ空中に居るファティマ達に、三叉戟からの雷撃が放たれた。
『やらせはせんよっ!!』
その刹那、ファティマと雷撃との間に影が飛び込む。
「アベル!!」
雷撃を刀で弾き飛ばしたアベルが、舞台に降り立つ。と、落とし子達の方へと向けて、その切っ先を向けた。
『ファティマ嬢が抜ける分、ここからは本気でやらせて貰おう!! 【フォームアップ】!! アクティブモーーードッ!!!!』
そう言うと、ディフォルメ体系だったアベルの腕が、脚部が、胴体がガシャガシャと音を立てて展開変形し、リアルタイプ寄りの頭身へと変わった。
『いざっ!! 参るっ!!!!』
あーうん。何か、落とし子達の方は、これでもう大丈夫な気がするわ。うん。




