降臨
『【号令】【仮称】落とし子の数を減らす事に注力してください!!』
「ん!!」
『【了解】デェス!!』
【フォートレス】を解除したのに合わせてだろう、オファニム、ケルブと合体したファティマが砲撃を開始し、それに合わせ、イブとジャンヌからの魔法攻撃が、したたり落ちるゲルに飛んで行く。
それを見た冒険者の魔法使い達も、魔法が無効化されなくなったのだと理解し、攻撃を再開した。
ただし、それは相手側も同じで、三叉戟から雷撃の様な物が迸る。いや、多分水棲系だろうクリーチャーの攻撃が雷撃て。
ただ、そんなツッコミなど関係ないとばかりに、強力な攻撃が次々と飛んでくる。
【フォートレス】で弱体化が入ってたのは向こうも条件として同じだった訳だわ。まぁ、当たり前か。ただ、こっちのソレと比べ、相手側の攻撃の方が更に強力だったってぇだけの話で。
【防壁】系の魔法を使える魔法使い達が【魔法防壁】を張り、しのいでは居るが、威力が高い上に、無駄に数が多い事も有って、【防壁】そのものが耐え切れなかったり、逸れて近くに落ちた雷撃の、その余波でダメージを受けたりしている冒険者も、わりと多く出て居る様だわ。
こうなると、第一手で【フォートレス】は正解だったってぇ事か。ただ、それでも、最大火力は家の娘達の方が高い様だけど。
確かに向こうの雷撃の威力も高いが、イブとジャンヌ、それと一部冒険者の魔法は、それらすら蹴散らして、景気よく相手を吹き飛ばしてはいる。
ただそれも、やはり、一部の冒険者だけではあるし、それ以上に相手は単純に平均して強い。その為にこっちの火力でも押し切れてはいない。
「一体一体が強力で数も多いって、単純に厄介だな」
イブとジャンヌの魔法攻撃で、したたり落ちて来る落とし子自体の数は減って居る様だが、それでも総数では変化が無い程度には、数が減ってくれて居ない。
やはり、根本をどうにかしなけりゃいけないって事か。
俺は【闘神化】をする為に【プラーナ】を高速循環させ、濃密に、そしてより純粋に、練り、純化させて行く。
【プラーナオリジン】とも言えるソレを更に濃密に、そして高速で循環。
濃密に、濃密に、濃密に、濃密に。高速で、高速で、高速で、高速で。
【魔力装甲】の各部分のスリットが開き、そこに眩いばかりの赤光が激流の様に流れ、その奔流が全身を駆けめぐる。
純化、高速化は、この所特に修練を重ねていた事も有って、かなりスムーズに行える様に成った。
以前の様な体中の血液が沸騰しかねない様な状態にもならなく成って居る。ただ、身体の熱量だけは相変わらず高い。が、それでも頭の芯の部分は透明に澄み切っている。
ふと、視界を開けばその位置が随分と高く成って居る。【闘神化】だ。
この視界からだと、罅の、奥にのたうつ邪神の存在をはっきりと感じ取る事が出来る。不意に、邪神と目線が合う。
あぁ、そうか、そんなに本気で『対決』をして負けた者達の妬み嫉みは美味かったか。それこそ、全く条件的の足りていない召喚を目印にして、この時空につまみ食いに来る程に。
だが、これ以上は駄目だ。オマエなんぞにくれてやる【オド】は無い。
「今回はここ迄で満足して、とっとと自分の時空に還れや、邪神」
俺は、自分の両脇からスライドして来た【プラーナ砲】のグリップを握ると、その指をトリガーに掛けた。




