クリーチャーとして納得の造形だけんども
邪神が潜んでいるらしい空中の罅からしたたり落ちたゲル状のそれが起ちあがり、魚の頭部に干からびた様な異様な細さの上半身と、長く伸びた魚類の尻尾の様な尾びれの様な下半身を持つクリーチャーが出現した。
ご丁寧に魚の頭部には前へと突き出した角が有り、その身にはスケイルアーマーを纏って、三叉戟を手にしている。
こんなことを考えてる場合じゃないとは思うんだが、何と言うか、この世界で目にしたどんな魔物より、ちゃんとファンタジーの魔物っぽい見た目をしてるんだが……
いや、それを出したのがやっぱりファンタジーっぽい邪神って存在だし、理解は出来る。理解は出来るんだがさぁ。何だがなぁ、この納得できない感。良いんだけんども。
そんな風に、俺が一寸遠い目をしていると、この事態に付いて行けて居ないのか、どうして良いか分からないって感じで観客がざわつき、一部冒険者何かは攻撃態勢に入る。
と、邪神のクリーチャーが、そんな攻撃の意思に反応するかの様に、そちらに顔を向けたかと思うと、三叉戟の先をに向けた。
そして、三叉戟の先端が明滅し……明滅しただけで終わる。
うん。俺の【フォートレス】内は、魔法とか使えませんからぁ!! 残念ッ!!
クリーチャーの行動に、冒険者達の方の魔法使いも攻撃魔法を使おうとして……やはり失敗する。首を傾げているが、うん、【フォートレス】仕様については全く説明して無いから、分からなくて当たり前。とは言え、今、【フォートレス】について説明するかと言われれば微妙な所。てかメンドイ。
とかやって居ると、クリーチャー側は魔法での攻撃を諦めたのか、三叉戟を構え、冒険者達に攻撃を仕掛けて来た。
これに驚いたのは冒険者以外の観客。そりゃそうだ。唐突に現れた怪物が襲って来るなんて事態、今まで経験した事なんざ無いだろうよ。
腰を抜かすならまだ良い。中には、攻撃しようとしてる冒険者に、『助けてくれ』と縋り付く者までいる。そうなりゃ当然、冒険者側からしたら邪魔以外何物でもない。
そんな感じで観客側が若干のパニックに陥って居る上に、罅からしたたり落ちるゲルの量が次第に増えて行っている。
会場の兵士も、観客を宥め、避難させようとはしているが、パニックに成りかかっている観客達には効果が薄い様だ。
そもそも、この場から出る方が危険なんだよな。多分【フォートレス】から出た途端に、邪神の【オド】の吸収を受けちまうだろうよ。
そう言う意味では、俺の【フォートレス】の範囲外に居る街の人達は大丈夫なんだろうか?
取り敢えず、会場の兵士達には、戦う気に成って居る冒険者以外の観客達を一カ所にまとめて護るように指示する。当然だが【フォートレス】の範囲内で、だ。
そうこうしている内に、冒険者達とクリーチャ-達が激突した。だが、一当てしただけで、吹き飛ばされる冒険者、数人がかりで、抑え込むパーティー。
あからさまに、冒険者達が劣勢に立たされる。あまりにも膂力が違い過ぎるからってのあるが、普段使える魔法が使えないからってのも有るだろう。
【フォートレス】を解きたいが、けど、これを解除しちまうと、確実に邪神の【オド】の吸収を受けっちまう事に成る。そう成ると、どれだけの被害者が出るか、分からなくなる。
参ったな、行動が裏目裏目に出やがるわ。
「ワン!!」
「ワオン!! ワン!!」
「アオーーーーーーン!!」
「わんわん!!」
と、そんな苦戦している冒険者達の元へ、家の頼もしい犬達が、文字通り駆け付けると、鎧袖一触、次々にクリーチャー連中を倒して行く。
そんな観客達の上をフワリと飛んで、見知った白と緑が俺達の前に着地した。
「【念動障~壁】」
『【しんせいけっかいぃぃ】』
ラミアーが障壁を観客側に掛け、セフィが上空を含めた闘技場周辺に結界を張る。ってか、結界なんざ張れたんかいセフィ。
「とーるん、攻撃に集中してドゾ」
「あ、はい」
即座に【フォートレス】を解除し、【プラーナ】を循環増幅させると、俺は【魔力外装】を纏い直した。
さて、随分好き勝手やってくれちゃってるけど、ここからは俺のターンだ!!




