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そう言えば問題無かった

 御令嬢……ルティシアの馬車に同乗させてもらう。詳しい話を聞く為だ。

 馬車内でも鎧姿。良いのかなぁとか思わんでも無いが、ルティシア自身が「よい」と言ってるので、通させてもらった。侍女さんの目は厳しいが。


「ゲンゼルキア聖王国?」

「はい」


 マジか。選りにもよって白が禁色の国じゃねぇか。増々魔力装甲を解除出来んくなったわ。

 てか、あの狂信者ども、何処で活動してやがるんじゃ!!


 いや、むしろ『灯台下暗し』なのか? 魔人族国でも、あの大司教は、光を司る神を信仰してた教会をカモフラージュに使ってたみたいだしな。

 偽装し慣れてるんかもしれん。


 まぁ、闇が深いって事だ。


 それはともかく、ルティシアの依頼はダンジョンの探索って事で良いらしい。

 ……俺の出来るの通路の掘削と抗夫の警護くらいなんじゃが?

 トラップ感知だとか解除だとかの技能を期待されても困るんだがね。

 身体強化一択なのは伊達では無いのだよ。


「当然ですが、ダンジョンの発掘は専門の者が致します。貴方には、道中の警護をお願いしたいのです」


 ああ、そっちなら、経験があるな。だが、それだけにしては随分と気前が良い話なんだが?


「それだけで良いのか?」

「……」


 俺はルティシアに懐疑の目を向ける。まぁ、魔力装甲に包まれてるんで見えない訳だが。


「実は……」

「お嬢様!! いけません!!」

「ですが、これでは騙している様な物では無いですか」


 やっぱりと言うか何と言うか、“裏”が有ったらしい。いや、侍女さんや、重要な事を話しもしないで依頼受けさせるの、ギルドで禁止されてるかんな?

 それでも受けて貰いたいってのは普通『裏ギルド』の方に行く。


 普通のギルドで断る様な依頼でも、裏ギルドなら受けるだろうしな。


 もっとも、裏ギルドに依頼するって事は、そのまんま、『私、後ろ暗いとこあります』って言ってる様な物なんだがね。


「ガーディアンが、いるのです」


 ガーディアン? そら居るだろう。何言ってんだ? このお嬢様。そもそも俺、そのガーディアンが守護する“扉”で飛ばされてこんな所、来たんだが。


「あっと、その、宝物の守護者が……」


 俺のもの言いたげな雰囲気に気が付いたのか、ルティシアがそう言い直した。

 なる程、“扉”の守護者と言う訳でなく、“宝物”を守るタイプの守護者が居る訳ね。警備ロボかな?


 でも、そう言う事なら俺向きかね?


「分かった、その依頼受けよう」


 俺がそう言うと、ルティシアの顔がパアっとほころんだ。


 ******


 ダンジョンに行くにはそれなりの手続きが必要らしく、それに数日かかると言う話だった。その為、その数日の間は、ルティシアの実家の方にご厄介になる事になった。


 屋敷のなかでは流石に脱がなくちゃダメだよな。

 って言うか、そもそも、普通に鎧じゃないから、兜脱いで~とかって事は出来ないしな。いや、それ以前に俺、『禁色』であるところの『真っ白』な子供だから、見られると拙いんよ。


 ん? ……あ、そうか。何も問題なかったわ。


「こちらが、我がオルネスティア公爵家の屋敷です」


 ルティシアがそう言うと、馬車の小窓から、何かホワイトハウスみたいな屋敷が見えた。あれが、ルティシアの実家か。てか、公爵家の御令嬢だったのか。


「流石に、このままの格好って訳には行かんな」

「そんな事は……」


 ルティシアの言葉の途中だったが、俺は(おもむろ)に魔力装甲だけを解いた。そこに現れるのは()()()()()()


 そうだったわ。身体能(フィジカルエ)力向上(ンハンスメント)発動時の俺、真っ赤な色に染まってるんだったわ。

 ってか、赤銅のゴブリンライダーって事で、あれだけ苦労してたのにすっかり忘れてた。たった2年前の事なのにな。これが年を取るって事か。いや、まだ幼児だったわ。俺。


 そもそも、こっちの姿の方が楽なんだよな。今はアクティブになってるけど、そもそも、身体能力向上はパッシブだったからな。


「……トール様は貴族だったのですか?」

「は?」


 見れば、ルティシアが瞠目し、侍女も目を見開いて口元を両手で覆っている。

 ……何故そう思った? あーああ、そういやそうか。


 俺は、今の自分の格好を見る。

 フリルの付いた薄いブルーのシャツと銀の縁取りの付いたグレイの肋骨服。カーキ色のキュロットパンツにアーガイル柄の靴下と、こげ茶の革靴。


 戴冠式後のパーティーにイブと出席する為に()()()()()()()()状態だったんだわ。


 うん、確かに貴族の子供に見えるわな。それも、上級の。

 何せ、公爵令嬢に対してタメ口を利いてる位だしな。

 侍女さんが顔を青くしてるのは、おそらく下級貴族の息女だろう彼女が()()の上級貴族子息に無礼な口をきいてしまったからと思ってるからだろう。


 いや、まぁ、確かに血筋的には同じ公爵家子女なんだがね。既に嫡廃されてますから!! それも生まれた直後に!!


「……いや、()の俺は貴族って訳じゃない」

「ああ、成程、そう言う事ですか」


 何が? 良く分からんがルティシア的には何か納得できたらしい。


「ええっと、そうなると報酬の方は……」


 ああ、庶民相手と貴族相手だと、色々変えんといかんもんな。だが、下手に貰っても変な柵が産まれそうなんだよな。


「いや、そのままでいい」

「ですが……」

「俺は、その条件で受けて良いと思ったから承諾した」


 ルティシアは尚も何か言い募ろうとした時、御者から「到着しました」と言う声が掛かった。


「お嬢様……」

「分かりました、この話は()()この辺で……」


 溜息を吐きながらレティシアがそう言う。『今は』ね、正直、これ以上その話は引っ張りたくないんだがな。


「では、改めましてオルネスティア公爵家へようこそ」


 しかし、まぁ、服装のインパクトのおかげで、魔力装甲について突っ込まれんで良かったわ。

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