名前が似てるってだけで同一視される場合も有る
ギルドマスターと、警備の人員の手配についての依頼の話を終えて、ギルドホールに戻ると、件の二人組が、ホールの端でバケツを持って立たされていた。……昭和の懲罰かな? ご丁寧に『私は領主様の悪口言いました』とかってプラカードを首からかけて。
まぁ、重い物を持って動かないでいるってのも、筋トレには成るから、頑張りんさい。どれくらいで周囲の冒険者に許されるか分からんけど。
その周囲の冒険者、俺が出て来たのに気が付くと、笑顔で『やあってやったぜ!』みたいにニヤリと笑いかけて来るんだが、これ、どうすれば良いんだ?
「笑えば良いと思うよぉ~」
「あ、うん」
取り敢えず微笑んでおいた。いや、やっておいて何なんだが。俺がむくつけき冒険者共に微笑みかけるって、誰得なんだこれ?
と、思っていたら、俺の微笑みを見たオッサン達が頬を赤らめて視線を逸らした。何か反省させられてた二人組も。
『こうかは ばつぐんだ!』
マジで!?
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不安要素が有るってのは確かだが、巡回をしている兵士達やコボルト情報部からも、そう深刻な問題が起きてるってぇ話は来ていない。
確かに、この街の、特に俺の情報を悪意ある噂程度でしか聞いて居ない輩が、家の街の住人ともめる事案の件数が増えてるようではあるが、それらも精々口げんか程度で、小競り合いにまで発展する事は無いらしい。
そもそもそれらが【ドラゴンスレイヤー】ってのは、実は大した事なんざ無い的な噂話だからってのも有って、だからこそ、『オイオイ、そりゃ、ウチの領主ディスってんのかぁ?』的な感じで、領民が反論して居るってな感じなんだそうな。
『【納得】流石はアドミニストレーターデス。自領の領民の心をガッチャしるデス』
「元々が難民だった領民も多いから、それを受け入れた人間に恩を感じてるってのは有るかも知れないがね」
てか、ガッチャて。
正直、吟遊詩人なんかに詩にされてるってぇ時点で、良きにすれ悪しきにすれ、話なんざ盛られるものではあるんだが、こちらで制御が出来ない情報が出回ってるってのは、少々気持ち悪いのも確かなんよね。
まぁ、人の口に戸は立てられないんだけんども。
ただ、悪意を持って噂を“使う”連中が紛れ込んでいると話は厄介になるんだよな。
『【質問】マイマスターは、今回、その可能性があると?』
いや、正直な所、これだけ人間が流れ込んでい要る状態なら、現状程度の俺の悪評なんざ有ってしかるべき程度に収まっているとは思っているんだがな。どうにも気持ち悪さが有るんよね。
特にそれが、【ドラゴンスレイヤー】って方に引っかかってる評価に偏ってる感じなのがね。
『【思案】そう言えば、どれもハッキリとマイマスターを指定して居るものではない様でしたね』
『【肯定】基本的には【ドラゴンスレイヤー】と言うものの評判だったのデス』
「そうなんだよな」
と言うか、【ドラゴンスレイヤー】と言う話題が出た場合に、この数年では“俺”と言う存在が際立っているから、イコールとされる事が多いけんども、決して【ドラゴンスレイヤー】は俺だけとは限らんのよね。




