商売は釣瓶落とし
遅くなりました。
申し訳無い。
『対決』大会の日が近づくにつれ、何処で話を聞き付けたのか、家の領地へと来る商人やら冒険者やら旅人やらが増えて来た。
何で、大会目当てか分かるかってぇと、その人が増えると同時に大会への参加希望者も増えたからだ。
“観戦”じゃ無くて“参加”なんだよ。可笑しい事に。
確かにTCGそのものは、最初っから『対決』が出来る様に作られてたけんどもさ。当初、家の領の、ちょっと珍しくて、美麗な記念品的お土産でとでしか出回ってなかった筈なんよね。にも拘らず、参加希望って事は、最低でもデッキが組める規定枚数である40枚のカードを揃えてるってぇ事な訳だ。
確かに最近は販売数も右肩上がりで増え、製造工場まで建てた上に増設計画まで出る位に成って居るとは言え、領外に出てる数なんざ、それ程、多くはないと思うんだが。
「それなんだがな、領地内で買ったカードパックをデッキに纏め、外で売っている輩が出ているそうなのだ」
「マジでか」
それは詰まり、ゲームが出来る仕様だってえ事を前提として購入して、対決が出来る様にデッキが組めるだけ、熟知してるってぇ事だろう?
こっちが販売してる物を又売りしてる事に関しちゃ、前世の転売ヤーの事とかあって、複雑な気分にゃ成るが、そもそもとして、この世界の商売としては、言っちゃ何だが、良く有る形態では有るから、それを咎める事は出来ないんよね。
そもそも転売ヤーが忌み嫌われてたのは、誰でも手に入れられる筈の物を買い占め、市場価格を吊り上げた挙げ句、高価で売り付けやがるからだからな。
この世界のじゃぁ、そもそも誰でもが、特定の商品を購入出来るってぇ訳じゃないし、そう言った商品を見つけられる訳じゃない。
他の商人から買った物だとしても、買った場所から最終的に購入するであろう者の所まで運んでいるってぇ手間も有る。
だからこそ、そこの手間に掛かるコスト位は上乗せされるのは、ある意味仕方の無い事でも有るんよね。
独占して値を吊り上げるなんてのは、そもそもこの世界でも褒められた行為じゃぁ無いしな。
それは兎も角、カードパックをデッキセットとして売り出す何てぇ事に、目を付ける輩がいるとはな。
元々加工業なら兎も角、売る時に加工までして売る何て事を考える商人とは、また、良い発想をするもんだと思う。
飽く迄、この世界では、ってぇ話だが。
前世では、付加価値を付ける何て事、割とやってた事だけんども、こっちでは見た事が無かったわ。
「で? それをやられて、オマエは大丈夫か?」
「問題無いだろう」
「その心は?」
エクスシーアがニヤリと笑う。
「そろそろ、第二期もやろうと思ってる」
え、それ、俺も仕事が増えるヤツだよね!?




