目玉
昼の間は手を付けられずに居たので、仕事終えて立ち上げたのですが、瞬殺で落ちて居ました。
色々と遅くなり、申し訳無い。
「ド、ドローですの!! えっと、【ゴブリンアサルトパンツァー】? を攻撃表示で出しますの!!」
そう言った後、公爵家ご令嬢は、チラリと後ろを確認し、そこに何も現れて居ない事を確認して安堵の息を吐いた。
いやまぁ、なんぼ召喚してる設定だったとしても、高々売ってるカードパックに入ってただけの、これと言って何ら信頼もくそもない様なモンスターが、突然背後に居たら怖いよな。
よくよく考えて見れば、結構なホラーだわ。
「アレは結構特殊な状況ですので、普通にプレイするのなら、あんな事は起きませんから」
「で、でもですの。アレが起こってたと言う事をわたくし、この目で見ているのですの」
俺としては手品の種を知ってる様な物だし、前世のアニメでは当たり前の様に行われていた事でもあるんで、そこに対してそれ程衝撃を受けちゃ居ないんだが、初めて『対決』の演出を見たお嬢様にゃぁ、ちょっとばっかし、刺激が強かった様やね。
そういえば、初めて動画ってか映画か。それを見た人々も、当初はパニックに成ったってぇ話を聞いた事が有るな。
それ位、そこに無い筈の物がハッキリと見えて、しかも動くってのは、インパクトが強いんだな。
そう考えると、一番最初に辻『対決』が行われた時、この街の人間は、良くパニックを起こさんかったよな。
『【苦笑】非常識には慣れているのでしょう。良くも悪くも』
いやまぁ、魔族が襲撃して来てみたり、街道沿いに精霊が出現してみたりしてるもんなぁ。家の領地。
それは兎も角、結局、ヘッセンバルク公爵ご令嬢、『対決』の誘いに乗る事にした様で、今はこうして、その為の練習中。
コレに関しては、俺の方もそれほど詳しくは知らないから、ある意味公平だろうってのも理由の一つな訳なんだが。
少なくとも、ずぶの素人のお嬢様よりはマシってぇ程度なんで、まぁ、間違っちゃいない。
何せ俺の知識なんざ、前世のTCGのそれの、更に曖昧な知識のチャンポンだしな。
そもそも、サンプル以外のカードとか持ってなかったし、丁度良いんで俺も、お嬢様と一緒に購入からデッキ構築まで一緒にやってみようって事で、こうしてご一緒させて貰ってる訳だ。
まぁ、サンプルなら一通り揃ってる訳なんだが、それは今回封印ってぇ事で。
公平を期す為でも有るが、一通りが揃ってるからって、デッキの構築が出来るってぇ訳じゃ無いしな。
本格的な『対決』に関しちゃ、まぁ、お互いの準備が整ってからってぇ事に成るんだが、一先ず、ほぼ素人状態二人でのお試し対決。
手順の確認ってぇ意味合いもあるがね。
対決自体は、俺とお嬢様でやる訳だが、ジャッジてか、確認にエクスシーアが来ている。
いや、おまい忙しいだろうが商会長。まぁ、ビギナーの試運転にプロが付き合ってくれてるってぇみたいな物なんだから、文句は言わんが。
「我が君」
「うん?」
「我が君とお嬢さんの対決、今回の目玉に成るので、そのつもりでいてくれ」
はい?




