アレ的展開
アベルが『やってくれましたね』と言った視線で見て来る。まぁ、意図して、こう言う展開に持ち込んだ訳だから、その視線は甘んじて受け入れるけんどもさ。
当然だが、ゴーレムについては研究はするけれども、別にバラバラにして売りさばくつもりなんざ無いし、当然、今までバラバラにして売るなんて事もした事ぁない。
そもそもの話、今回のこの古代遺跡からゴーレムが出て来るかも分からないしなぁ?
つまり、お嬢様は全くの可能性の話だけで、俺に決闘を申し込んだ訳だ。
それも、こっちが『それを行う』と言った訳でもない言葉で、だ。この対話についてはファティマが記憶してるし、それに関しちゃアベルもそうだろう。
どうやら、古代文明の共有クラウド自体は生きてるらしいし。
俺も勘違いし易そうな言葉は選んではいる。だが、そもそも断言はしていない上に、あたかもお嬢様の言葉で、ソレに気が付いた様な流れにはしている。まぁ、汚い大人の戦略ってぇヤツだ。
一寸、心配に成る程のゴーレム愛にあふれたお嬢様には悪いが、あくまで俺が引っ掛けたいのは後ろで糸を引いてる公爵様なんでね。間に挟んじまったのは申し訳ないが、これも社会勉強だと思ってあきらめて貰おう。
「決闘、ね。それはどんな? 言っておきますけど、私は、魔法は一切使えません。その事も考慮して頂けると有難いのですが?」
「そ、そうですの? なら、魔法対決なら……」
「その場合、代理の者がお相手致しますがね」
『むぅ』と言った様子で、考え込むお嬢様。
『だとするならば、ワタシが出よう。当主殿と一騎打ちと言うのはどうだろう?』
「ア、アベル!? 勝手に決めないで欲しいですの!!」
『かと言って、何の戦闘能力も持たないポンコツのお嬢が出る訳にも行かんだろう? ましてや、向こうが関係のない代理を出したとして、お嬢、君は納得するかな? それならば、お嬢の護衛代わりでもあるワタシが出るのが筋と言う物だ』
「ま、魔法なら……少しは……使えるのですの……」
『赤ん坊よりはマシ程度だろう? なら、やはりワタシとご党首で……』
『【反論】別に私が出てとしても構いませんよ? それなら、丁度、護衛代わり同士ではあるでしょう』
……別に全く関係のない輩を金で雇おうとか思って無いんだがね。まぁ、その可能性の示唆ってぇ所か。このお嬢様も、結構な感じで迂闊っぽいからなぁ。
それと『護衛代わり』ってぇ言葉だけは同じだけど、多分アベルの方は『護衛も兼ねてる』ってぇ意味だし、ファティマの方は『戦力として数えられてる』ってぇ意味だよな。俺の武器でもある訳だし。
ちょっと違うが、結構違う。
「……ファティマが出る場合は、戦略兵器以外の、全オプション使用可能ってぇ前提じゃ無ければ許可は出さんぞ?」
『【苦笑】割と心配性ですねマイマスター』
実際の所、個体での戦力もアップしている関係上、ファティマが早々負けるとも思っちゃいないが、ただ、それ以上に向こうの戦力が分からないからな。せめて、予想の範囲に収められるようにはしておかんと。
いや、負けるとは思ってはいないんだ。負けるとは。ただ、勝ったとしても、破損が酷い状態だと嫌なんだよな。
『ふむ、自信は有りそうではあるな、ならば、それで良いな?』
「ですが!! ですの!!」
『ならば、他に何か考えがあるのかね?』
このお嬢様も、アベルが傷つく事はやはり嫌らしい。多分、自分自身の手でケリをつける為に、魔法関係での勝負にしようと思っていたんだろうが、それは初手で、俺が魔法は全く使えないって言った事と、代理では納得できないだろうと言うアベルの言葉で封じられっちまったからな。
「そんな時こそカードファイトォ~」
『対決ぅ~』
何時から応接室に居た魔物’S。




