人件費も削れます。イヤ、今の所、削る方が拙いんだが
蒸気機関による工業の発展は、文明レベルを押し上げた一因ではあるが、だからと言って何も古代遺跡の能力を使って蒸気を出そうとか、もちろん、そう言う話じゃぁない。
現状、各家庭に設置してある照明やら給湯器やらコンロやらの仕組みは酷く簡単だ。照明は【ライト】の給湯器とコンロは【ファイア】の魔術回路……分かり易く言えば魔法陣を使って、その二つの魔法を発動させているってぇだけの話だ。
給湯器の水は、普通に上水道で引いてるだけだけどな。
前世程電化製品が発達させられるなら、【エレクトリック】みたいな魔法で、電気を作り出せば、色々と応用も効きやすい気もするが……
『【残念】ソレを行うには、まだまだ文明レベルが足りません』
だよねぇ。
真空管も未だ作られて居ない様なレベルで、ソレを願うのは先走り過ぎだってのは分かる。もっとも、一足飛びに出来る手段が古代遺跡でもあるんだが、古代遺跡の機能を把握して扱える人間なんざ、少なくとも俺の知ってる人間の中には居ない。
家の古代遺跡は、基本的にファティマかジャンヌが居なけりゃ手を出せない訳だし、いつぞやの“生きてる”古代遺跡だって、ありゃ、中枢の機能がまともに稼働してるから動いているのであって、余所の人間が手を掛けているってぇ訳じゃぁ無いからな。
確かに、家の古代遺跡の機能を使う訳だが、それに関しては、単純な【魔力タンク】としての、まぁ、言わばエネルギーの供給源としての物でしかない訳で、古代遺跡そのものを直接的に使用するって事じゃぁ無いからな。
何故、そんな事を気にしてるかと言えば、工場として稼働させるなら、そこで働くのは一般市民ってぇ事に成る。
そんな一般市民に、『古代遺跡も扱って貰うから』何て言うのは、流石に酷だろうからな。
なんで、置いてある装置に関しては、古代遺跡の機能を使わないってのが大前提に成る訳なんだわ。
さて、話を戻そう。現在使われてる魔法回路は【ライト】と【ファイア】な訳だが、今回、使用するのは【ローテイト】もしくは【ロータリー】か。つまりは回転させるってぇ魔法に成る。俺はまぁ魔法については全く駄目だが、イブか……ジャンヌが戻ってくれれば、その辺りの詳しい所を説明して……
いや、説明はされなくても良いな。取り敢えず、そう言った効果を及ぼす魔法を紹介して貰えれば。
それはさて置き。蒸気機関ってのは、つまりは蒸気の力を使って回転運動を起こすってぇ代物な訳だ。それも、蒸気が生み出されている間はずっと。
その上、そうやって生み出される回転エネルギーが、人のや動物の何倍も力強い。それこそ、『馬力』ってぇ単位で表される位になぁ。逆を返せば、同じ様な回転エネルギーを生み出せるなら、別に蒸気機関でなくても良いってぇ事に成る。
魔力を供給し続けられれば、延々と回転を行えるのなら、それにギアやらクランクやらを組み合わせれば、それは立派な機械に成るだろう。
実際、マトスンは自動オーケストラとか作れる訳だし、それをゼンマイ動力から魔法動力に変えるだけだとも言える訳だから、恐らく、それ程難しい事じゃぁ無いとは思う。
だからこそソレを使って製紙や印刷を機械化しちまおうってのが、今回俺の企んでる事な訳だな。




