面倒だけど、貴族なのよね
エクスシーアの方にはスターターセットが出来たら国王陛下に献上する様に言っておく。エクスシーア商会の名義で。
「うん? 何故にこのタイミングなのだ? 我が君よ。それに国王陛下に渡すのであれば、我が君の伝手を使った方が確実だろう?」
「ああうん。もうちょっと小規模だと思ってたからなぁ。でも、支店で拡張パックとかを販売するってんなら、規模も範囲も大きくなるから、商人や旅人だけじゃ無くて、貴族階級にも噂が広まるだろうし、それなりの根回しが必要になって来るだろう? それに、必要なのは『根回しをする為に献上をした』ってぇ事実の方だから」
「ああ、なるほど。しかし、我が君は自身の知名度を過小評価するきらいがある様だな」
過小評価、ね。以前にも言われたが、そこまで大事に成る様な話かね? まぁ、良いけど。
さてさて、そうなのだ、今回のコレは根回しそのものってのは、それ程重要な訳じゃぁ無いんだ。これって、つまりは『周囲の人達にも、知らせようとしていた』ってぇ姿勢が有ったかどうかが問題に成るんで、実際、国王陛下の所まで献上品が行ったかどうかってのか重要じゃぁ無い。
むしろ、こんな娯楽品が国王陛下の手元まで行くだ何て事は思っちゃいない。どちらかと言えば、途中で『こんなチンケな商品で、陛下にお目汚しさせるなど』って、握り潰される可能性の方が高いと思う。
ただ、一度でも献上して、それが、記録として残って居れば、『こんなに素晴らしい物だと言うのに、国王陛下に先に知らせて居なかった。これは国王陛下を引いては国を蔑ろにしている』みたいな揚げ足を取られる心配がなくなるってぇだけの話なんよね。
エクスシーアの推測の通りで有るならば、このTCGはとても流行るらしいからな。その予想通りだった場合に、その事を予見して居たにも拘らず、流行りの最先端と成り得る物を国で最も尊き御方に知らせて居なかったぁなんて事は、充分に足を引っ張る材料に成り得る。
もっとも、スターターセットについては、ルールールー、ルーガルー翁経由で渡してはおくけどね。
まぁ、それは兎も角として、そんな事で足を引っ張る輩ってのは、やっぱり一定数は居るんよ。
確かに俺は国王陛下に目を掛けられて居るし、軍部をへこませた事も有って一目置かれている状態だ。そんな俺に難癖をつけて来る輩ってか、そんな俺だから難癖をつけて来る連中ってのは、どうしたって出て来る。
俺自身は権力に執着はない。どちらかと言えば、俺を今の地位に置く事で国との繋がりを待とうとしてるのは、王族の都合って面が強い。
ただ、権力の力を盲信してる様な輩にとってすれば、権力を望まない輩なんぞ、存在するってぇ事自体が信じられないってか、存在そのものが頭ん中には、“無い”だろうから、ポっと出で随分と王族にすり寄ってる様に見える俺ってぇ存在は、結構な権力“欲”に取り憑かれた人物に見えるんだろうさね。
それ故に自分と同じ様に権力に執着するライバルで有り、“敵”足り得る様に見えっちまう。
だからそこ、自身の権力が脅かされない様に、俺に付け入る隙を虎視眈々と狙ってる訳だ。
俺の権力を削ぎ落とそうとなぁ。
ぶっちゃけ、無駄な努力ではあるんだけんどもさ。正直、俺の領地も、俺って言う頭を削ぎ落した所で、揺るがないだけの枠組みは出来て居る。各種代表を選出しての議会制度にしたってそうだし、古代遺跡を利用した街のシステムにしたってそうだ。
例え、俺を疎ましく思ってる連中が代わりに入り込もうとした所で、自分達の知ってる統治方法と違い過ぎて何も出来ないだろう。
第一、家の街の連中は、頭から抑え込もうとしたって反発する様な連中ばっかりだし、教育のおかげで、下手な貴族連中より、地頭も良いから、手に負えないだろうさ。
てか、そもそも国王陛下の直属の諜報組織が居る時点で、下手なことすりゃ、そいつの首が、命令してる貴族諸共飛ぶだろうさね。
それでも良いなら、やってみんしゃいって感じだろうさ。




