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警護開始? みたいな

 ついた途端に一悶着有ったせいで、エラく疲れたわ。

 主に精神的に。

 前世でも結婚はしたことがなかったが、その時の心情を持ち越しちまったのか、やっぱり結婚したいと言う気持ちはない。

 それとも、ラノベで良く有るように、体に心が引っ張られたのか……

 無いな。それは、うん。

 古典SFや、ホラーなんかで、怪物と化した人間が。その身体の形状に相応しい、醜い心に変わって行くなんてお話もあるが、だったら前世の俺は、もっとも大人だったわ。見ろ!! 言動が変わって無いにも関わらず、2歳児でも違和感のない今の姿を!! そう、俺はガキの頃から変わってなど居なかったのだあぁ!! な、何だって~!! 証明終了!! 以上、Q.E.D.


 はい、無理矢理テンションを上げましたよ、と。


 それはともかく、依頼は式典への参加とエリスの警護だ。正式な依頼だってんのなら、ここの警備状況を知りたいんだがね。

 そうゴドウィン候に言うと、騎士団長を紹介してくれた。


「『ドラゴンスレイヤー』殿にお目に掛れて光栄です」

「トールで良い。王女様の警護って事で依頼を受けた。よろしく」


 黒鎧(オファニム)に搭乗したまま握手をする。騎士団長の話では、基本、城内の警邏が騎士団の仕事で、見張りや城下の巡回は兵士達と連携を取っているらしい。

 で、俺の仕事はと言うと……


「姫様の傍で、守っていただければと」

「……いや、それは有り難いんだがな」


 まぁ、これも、結婚云々と似た様な話だ。最大戦力と言う“俺”が傍らに居る事で、他をけん制しようと言う事なんだろうな。

 だがな……


「見た所、防諜の手が足りてない様だが?」

「!!」


 エリスの派閥が弱小だった事を差し引いても、所謂『暗部』の人間が少ない様に言い感じる。こちとらどれだけ公爵様んとこの諜報部隊に見つからんように公爵家に忍び込んだんだと思ってるんよ。【隠形】も【気配察知】も鍛えに鍛え上げてるっちゅ~の!! それも、元A級冒険者にすら気が付かれないまでに磨き上げたわ!!


 『暗部』の手が足りてないせいなのか、どうも可笑しな動きをしてる輩の気配がそこかしこに。

 一般人装うなら、足跡残さない様な足運びとかしてんじゃねぇよ。

 確かに後々の痕跡は残らんだろうが、現在進行形で怪しすぎんだろ。


「良かったら、しょっ引いて来るが?」


 騎士団長がゴドウィン候に目配せをすると、彼はコクリと頷いた。


「是非」

「了解だ」


 ******


 戴冠式は、この国最大規模の教会で行われるらしい。そう聞くと、教会のが王様より上なんか? と思うが、そもそも魔人族ってのが、元魔族。つまりは“邪神”と言う存在に()()()()()変異した種族から、邪神との縁を切って、『邪』の付かない神様の方に【改教】する事で生まれた種族な訳だ。


 だからこそ、『神』に認められてっていうパフォーマンスは、権威付けと言う意味でも重要な事らしい。

 あくまで教会は、神の『代理』って事で、別に王の上って訳じゃないってこったな。


 王都散策のついでに戴冠式の会場となる大聖堂に来てみた。今日はエリスは一日中執務室で缶詰だそうで、特に警護の必要は無いって事だ。

 むしろ、俺が居る方がエリスが集中力を乱すから、むしろ邪魔に成るんだと。何だかなぁ。


「すご、い」

「だな」

『【説明】この国で最大規模の教会です。主神は光の神だとか』

『【補足】最大で最古の宗教団体と言う話デス。ボク達が発掘された時には既にあったのデス』


 俺と手を繋いだイブが呆気に取られる様に呟き、ファティマとジャンヌが解説を入れてくれた。

 聖武器(こいつら)が発掘された時て、邪竜封印が数百年前の話だろ? その前からかよ。


「って、発掘?」

『【肯定】私達は、この国で発掘されました』

『【肯定】遺跡(ダンジョン)からデス。そもそも、この国の下にいくつもダンジョンが埋まっているデス』


 へぇ、だとすると、この間発見した様なダンジョンが、まだいくつも埋まってるってぇ事だな。

 そんな話をしながら、教会へと続く大階段を上って行く。

 白乳色の石積みの壁に蒼天より青い屋根の大聖堂は、同じ“教会”ってカテゴリーにも拘らず、俺等が拠点にしている教会とは「月と(すっぽん)」だ。むしろこっちの方が同じ教会って建物でごめんなさいって言いたくなる。

 いや、そもそも朽ちた教会だったんだけんどもよ。


 喜捨を求められて、銀貨を払う。一般市民だと高すぎる金額だが、裕福な商人レベルだとそんな感じらしい。

 今はイブもエリスから貰った服を着てるおかげで、結構裕福そうなお嬢様に見えるからな。それも、ゴーレムメイド付きの。


 ミカ達は流石に中には入れんかった。「ちょっとの間待っててくれ」とわしゃわしゃする。


 さて、こんな立派な教会だ、内部はさぞ静謐な感じかと思ったんだが……

 違和感と言うには小さすぎる不快感。どうも肌がピリピリする様な感じを覚える。


 この感じ、どこかで……?


 見れば、イブも違和感を感じてるのか、ちょっと眉を顰めていた。それ以外は普通の教会に見えるんだがな。他の人間は気付かんのかね?


『【憤懣】随分と空気が澱んでいますね。神を祭る場所として、これで良いのでしょうか?』

『【諦観】大きい組織ほど腐敗しやすいのデス。これも人間の(サガ)なのデス』

「いかがいたしましたか?」


 余程奇妙な表情をしていたんだろう。俺達に神父さんが声を掛けて来た。だが、その神父の顔を見た時、俺は思わず顔を顰めた。


 張り付けた、仮面の様な笑顔。神の僕がしてて良い表情じゃねぇだろ。


『【説明】お嬢様が少し気分を悪くしただけです』

『【補足】すぐに出て、休める場所に行くのデス』


 感情の籠らない言葉で、ファティマ達がそう言う。方便が使えるんな。ロボなのに。

 神父の返事も待たずに、俺達は外へと移動した。

 教会の外で待っていたミカ達と合流し、モフモフで心を癒す。


 しっかし、ここで戴冠式か……大丈夫なのか?

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