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口は災いのもと

 寝落ちしていました。

 遅くなり、申し訳ない。

 まぁ、兎も角、ラミアー的にも鐘一つってぇ感じだった事もあって、ファンクラブは非公認続行って事には成った。

 いや、歌が感動的だったとしても、ラミアーが認めるかは分からなかったって言うか、多分認めるってぇ事は無いと思う。


 活動禁止にしない辺りがラミアーの優しさかもしれない。


『【疑問】何故、あのボーカルは半音外して居たのでしょう? 後、声域が狭すぎると思うのですが? 高音域は声が出て居ない様でしたし、低音域では声が響かない。基本的な肺活量が足りて居ないと思います』


 おおい! 言ってやるな、相手はド素人だ!!

 何せ、この世界の現在社会に於いては、コイツが、初めて歌ってモノを歌った訳なんだからさぁ!!

 それに、言わぬが華ってぇ事は有るんだよファティマ!!


 と、案の定、ファティマの言葉を聞いた『D』が、ギョロリと彼女の方を見ると、何やらヌルリと言った感じの動きでファティマににじり寄って行った。


「あ、ああああ貴女には、“歌”の歌い方に関する知識が有るのですねっ!! と、言うかぁ……貴女ぁ、アーティファクトォ、ですねぇ?」


 にじり寄って初めて気が付いた様に、『D』のファティマを見る目が怪しく光る。

 いや、今更かよ。本当にラミアーしか見てなかったんだな。コイツ。


『【恐怖】ひっ!』


 こう言う研究者タイプの輩ってのは、自身に興味の無い事に対しては蛋白だけど、関心のある事には、異常な執着を見せるからなぁ。

 アレだ、その辺はマトスンと同じだ。


 歌い方に関しては、俺も同じ事を考えてたけど、口に出すと厄介な事に成りそうだから黙ってたんだが……


 まぁ、ファティマは間違いとかあると、正したいタイプだからなぁ。


 確かに前世、今世合わせても、俺だって素人ではある。


 ただ、前世は、あれだけ歌に溢れ、誰もが名曲や神曲(かみきょく)と言われるモノに触れられる環境だったんだ。


 流石に、この世界で初めて歌を歌った『D』に比べれば、耳も肥えてるし、理屈も知っているさね。

 厄介事に成りそうだから黙ってたけど。そしてそれは正解だったと実感してるけど。


 『D』どころか、他のファンクラブの連中からもにじり寄られてるファティマを見ながら、俺はそう思った。

 いや、小声で『モテ、モテ、モテ、モテ、モテ、モテ、モテ、モテ』とか呟きながらじわじわとにじり寄る男達ってのは、ある意味ホラーやね。


 こんなんだから、モテ無いんだと思うんだわ。俺は。

 『D』にした所で、黙っていれば地味だけどイケメン寄りなんだから、自身の行動や態度を返り見れば、充分モテそうな気がするんだがねぇ。

 まぁそれが出来ないから、こう成ってるんだろうが。


 今回は、余計な事を口にしたファティマの自業自得な面も有るんで、あえて助けはせんがね。

 あ、でも、コレでファティマの事を『先生!!』とか『研究対象が!!』って言い始めて、家に通い詰め始める方が厄介か?


 そう思い直し、『D』達に介入しようとすると、ファティマがファンクラブの連中に触れられない様な巧みな体捌きで、包囲網を潜り抜けた所だった。


『【保護】マイマスタァー!!』

「口は災いのもとってぇ言葉を覚えておくと良いぞ?」


 ささっと、俺の後ろに隠れる様に飛び込んで来たファティマに、俺はそう、声を掛ける。

 アレだ、まだちょっとマトスンに纏わり付かれた時の事がトラウマに成ってるっぽいな。


 と、『D』達の方に注意をしようと視線を向けると、何でかファンクラブの連中が、怯んだ様な表情で俺を見ていた。いや、俺、何もしてないよな?


「な、何と言う【モテオーラ】!!」

「モテ(ぢから)40万オーバーだとぉ!!」

「ば、化け物か!!」

「目が! 目がぁ!!」

「こ、これが【ドラゴンスレイヤー】の真の力だと言うのでござるかぁ!!」


 いや、意味わからん上に、多分【ドラゴンスレイヤー】関係ない。

 俺がそんな事を思っていると、ファンクラブの連中が、踵を返して、走り去って行った。

 口々に『月の出で居る夜だけだと思うなよなぁ』とか『隆盛を誇っていても、いつかは衰退するのだぁ』とか叫びながら。


 いや、どうでも良いけど楽器どうすんのよ? 置いて行ってるけど……

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