そう言うところだと思う
遅くなりました。
申し訳ない。
ファンクラブの楽器や衣装は、やはり古代遺跡由来の物で、古代遺跡から見つけた物を同じ古代遺跡で見つけた文献から修繕再現したものであるらしい。
「その文献で、この“歌”は最愛の女性に捧げる物だと書いて有りましたので」
そう言って、若干気落ちした様子の『D』は、どうやらその“歌”のスコアらしき紙の束を俺に差し出して来た。聞けば『D』の本業は考古学者と言う物であるらしく、元々、俺の領地に移住して来たのも、複数の古代遺跡が発見されたと聞いたかららしい。
ただ、発見されたと言う古代遺跡は、今はまだ、冒険者ギルドが安全確保をしている最中な為、研究者の募集まではしていない所為で、足止め状態ではあるっぽいのだが。
まぁ、そこは俺の政策のせいであるんで、申し訳なくは思う。
それはさて置き、このスコアも、過去に古代遺跡を探索して見つけた物なのだそうな。
「最初、この“歌”に関する文献を見つけた時には愕然としました。何せ、文献が事実であるなら……」
愕然? 何か重要な問題とか、そう言う事柄でも書いてあったのだろうか?
今聞いた感じでは、そう、問題が有るって様な感じはしなかったんだがな。
それとも、それは『D』が取り除いたが故に、今、演奏出来ているのか?
「この、“歌”を極めし者は!! 女子にモテモテとなり、数万単位での異性に好かれられると書いて有ったのですから!!」
!!?
えっと? 何だろう、コメントに困る。いやまぁ、ただ、コイツ等がファンクラブなんて概念を知っていた理由は良く分かったわ。
「異性に、モテ、たかったっ!!」
「何言ってんだ!? おまいは!!」
前世のDT中学生みたいな事言い始めおったわ!! 見れば、他のメンバーも血涙流しそうな勢いで頷いていらっしゃる。
てか、モテたいからバンドやるとか、それこそ前世では、阿保みたいに多い理由だったけんどもさ、特に俺と同じ世代だと。それで、本当にモテモテに成れるのはほんの一部だし、そう言った下心ってのは、女子連中は敏感に感じ取るらしいぞ?
それに第一、基本『ただしイケメンに限る』なんで、やっぱりモテるのって、所謂イケてる男子だけなんだわ、そう言うのって。トール、知ってる!
で、そんな感じで暇を持て余した『D』は、『あれ? 時間が有るなら楽器の練習出来るんじゃね? モテる為に!』とか思い立って、有志を募って、バンドを結成したのだそうな。そうか、しちゃったのか。
こうして結成されたバンドの練習をする日々、ある時、彼等はとある噂話を小耳に挟んだのだそうで、それが『【ドラゴンスレイヤー】がハーレムメンバーと一緒に、ちょくちょく冒険者ギルドに出現してるらしい』と言う物だった訳だ。
その噂を聞き、彼等は激怒した!!
かの(非モテにとって)暴虐なる王を必ずや討たねば成らんと!!
って、逆恨みですら無いんじゃが!? 後、ハーレムじゃ無くて、家族だし! パーティーだし!?
ただ、彼等ファンクラブは、そこで運命の出会いを果たすことに成った訳だ。ラミアーとの。
「あの、衝撃は筆舌に尽くしがたく!!」
「あぁ、はい」
『D』の言葉に、メンバー全員がブンブンと頷く。そんな経緯で、彼等はそのまま即座にラミアーファンクラブへとシフトしたらしい。
ラミアーが、凄く嫌そうな顔をしてるが。いや、分かるけれども、少し、抑えなはりなはいな。
ともかく、コレが、『D』達が、ラミアーファンクラブに成った経緯なのだそうな。
因みに、彼等の演奏は微妙なかんじだった。




