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権力は行使する為に有るんだと彼女は言った

 また、寝落ちしていました。

 遅くなり、申し訳ない。

 ラミアー自身にかなりの戦闘能力があるし、【魅了の魔眼】もあるから、早々、不覚を取る事も無いだろうけど、不利を覆すだけの知恵を持つのもまた人間と言う物なので、油断は出来んのよね。


 まぁ、可能性としては、魔物だとバレて襲われるより、その外見の見目麗しさやら白子(アルビノ)と言う珍しさ、後はもしかすると、光教会的禁色()()()ってぇ理由で襲われる可能性の方が高いかも知れんのだが。

 油断ができんのが人間だが、同じ位、愚かしいのもまた人間だから、義憤より欲望って輩も多いからなぁ。


 ******


「ん?」


 俺が眉を顰めると、ミカとバラキが窺う様に俺の方を見た。俺は2頭(ふたり)の耳元をカシカシと掻いてやりながら、耳元に口を近づけると、『待て(Stay)』と囁いた。

 取り敢えず、気配は5つ。知らない気だな。

 さて、どうするかねと頭を捻ると、ラミアーが俺の方に頭を突き出した。


「いや、何やってる、ラミアー」

「あたしもぉ~」


 何を犬達に対抗意識燃やしてるんだか。

 取り敢えず頭を掻いてやると、ご満悦そうに笑みを浮かべた。


 さてさて、あんまり気負い過ぎて空回りすると、いつぞやの二の舞だ。取り敢えず、どっちなのかを見極めねぇと。

 素行の悪い冒険者が増えてるってぇ報告は受けてたが、だからと言って、今、俺達の周囲を囲もうとしてる輩が、()()だとは限らない。


 俺狙いだとするなら、魔族連中の可能性だって有る訳だしな。


 この街は隣国や“扉”での移動の通り道でもあるんで、商人やら旅人とかも多いから、街に入る人間をそれ程規制しては居ない。だけど、それ故に、それ以外の目的を持った連中も、出入り()し易いだろう。


 ()()()()だけれども。


 注意はせにゃ成らんが、疑心暗鬼も良く無い。その辺の加減が難しいやね。

 出来れば捕まえっちまいたいが、こっちに手出しして来て無い以上、こっちからも手出しは……


「そおおぉいぃ」

「って、うおおい!! 何やってんのぉ!?」


 俺が手を出しあぐねて居る内に、ラミアーが【念動力(サイコキネシス)】で、隠れていた奴等を全員引きずり出した。いや! ホント! 何してくれやがっちゃってる訳!?


「とーるんは考えすぎぃ」


 考えすぎ? いや、まだ何の罪も犯してない奴等を縛り上げるとか、その方が不味くないですか? ラミアーさん!!

 引っ張り出された連中は、ラミアーの【念動力】で空中に縛り付けられ、あたかも不可視の十字架に張り付けられているかの様に見える。

 その姿は流石に目立つらしく、ここが領主館から続く大通りだって事もあって、既に、結構周囲がざわ付いて居る。


「あのねぇ、領主である貴族の後をコソコソ覗ってるってだけで、充分怪しいし、不敬だと思うよ?

 それこそ、何が企んでるだろぅって疑われるにも充分だし。とーるんの優しさは美徳だと思うし、あたしも好きだけど、貴族としての権利の行使を躊躇っちゃためだよぉ?」


 …………あー成る程、確かにそうだわ。ちょっとまだ、前世の価値観を引き摺り過ぎだったわ。

 前世の、特に一般市民だと、『疑わしきは罰せず』が基本な上、“具体的な被害”ってぇヤツが無いと、捕まえる事すら儘成らなかったけど、今の俺は貴族で領主(けんりょくしゃ)な訳だから、“後を付いて回る”なんて、事やらかせられてるんだから、捕まえる位なら問題無いのか。

 てか、前世でだって、後を追い回してれば、立派にストーカーだよな。


 まさかラミアー(まもの)に、人間社会のルールで忠告貰うとは思わなんだわ。


「すまん、ラミアーの言う通りだわ。有り難う」

「ん~」


 俺の感謝の言葉に、ラミアーが頭を差し出す。

 俺は苦笑しながら、ワシャワシャとそれを撫でた。

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