上手く行くのは一部だけで大概は爆死するやつ
遅くなりました。
申し訳ない。
協議の結果、【ドラゴンスレイヤー】の名前と肖像は使っても良いけど銅像の類はNGって事に成った。
「フィギアは肖像の類に入るからのう?」
「マジで?」
「“銅”像ではないのでな!!」
したり顔でドワーフの頭領がそう言った。いや、取り決めが終わってからそう言う事いうのは反則だと思うの。
とは言え、確かに俺が想定してたのは町中のオブジェ的な物だから、こう、私的に所有する物まで制限かけるのもどうかとは思うしなぁ。
「……まぁ、20cm程度の物までなら」
「良しっ!!」
何故イタリア語? と、言うか他の代表も嬉しそうにしてるのは何でかな? かな?
ちょっと判断誤った様な気がしないでもないが、もう一回、代表達を向こうに回して話し合いをするのも面倒臭いんで、この辺にしておこう。気力体力根こそぎ奪われるし、疲れたから、マジで。
何が彼等をここまで掻き立てるんだか、本当にさぁ。
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あれから、歓楽街を創るってぇ計画自体は、滞りなく進んでいるらしい。関連したストリートに住んでる住民とかも、立ち退きする人達だけじゃぁ無くて、人によっちゃ、その関連の店舗を新たに始めるなんて人達もチラホラと出ているんだそうな。
成程、住んでる所から出て行かずに、関係する感じの商売を始めるってのも確かに手ではあったな。会議をしている時には、気が付かんかったわ。
商売は、既に商売をしている人間が行うものって言う先入観があったな。俺も、ちょっと頭が固くなってたみたいだ。いかんいかん。
「……グッズ屋って何だ?」
いつもの様に執務室で、承認待ちの書類を処理していると、件の歓楽街関係の書類の中に、『“俺”関連の商品の開発と、販売及び生産工場を建てる』と言う申請書を見つけてギョッと成った。
『【説明】マイマスターの関連商品を専門に扱う商店の様ですね』
「パードゥン?」
『【説明】マイマスターの関連商品を専門に扱う商店の様ですね』
聞き違いじゃ無かった!! 何だよ!! “俺”関連のグッズって!!
『【疑問】この間の会議で了承を受けたと聞きましたが?』
いや、確かに歓楽街を創るにあたって、そもそもが冒険者をメインターゲットにしている関係上、冒険者の中でも有名である【ドラゴンスレイヤー】を所謂“売り”にするってな事は聞いたし、その為に、俺の肖像権的な物を使っても良いってぇ話には成ってたが、ここまで大々的に推すとは、思って無かったわ!!
関連グッズ専門の店舗を用意するとか、その商品を作る為の工場まで建てるとか。いやそれ、本当に冒険者関係に売れると思ってやってる訳!?
採算取れなくね?
『【確信】いえ、恐らく確実に採算はとれるでしょう』
「マジで?」
『【肯定】はい、冒険者向けの歓楽街とは言え、その手のお店のメインターゲットが冒険者と言うだけの話な訳ですし、別に、冒険者専用のお店と言った訳でもそう言ったお店だけで通りを構成しようと言う訳ではありませんし、そう言った店舗など、むしろ、ほんの一部に過ぎません。それだけでなく、商人や隣国への旅人も居る訳ですし、そう言った“旅”をしている者にしてみれば、『話題に成る新しい品物』と言うのは、むしろ魅力的な商品と映るでしょう。そう成れば、新たな商機とも成り得ますから』
ああ、そうか、冒険者“向け”であって冒険者以外が利用しちゃいけないって訳じゃぁ無いからな。そこは納得した。
ただなぁ、いくら【ドラゴンスレイヤー】とは言え、“俺”だぞ? ちょっと風変わりだとは思うが、言っても、何処にでもいる子供をキャラクターにした商品を買いたがる人間なんざ、そう、多いとは思わんのだが。
『【嘆息】やれやれですね。マイマスターはご自分の魅力を全く分かっておられません』
少し呆れを含ませた声色で、ファティマがそう言うと、給仕をしてくれていたイブも、ソファーでゴロゴロしていたラミアーとセフィ、それとヘンリエッタ王女もコクコクと頷く。マリエルは『王女様がそう言うならば』みたいなスタンスだけれども。
そしてミカとバラキは何でか俺の足に頭を擦り付けて来た。いや、何してんの?
とは言え、ここに居る俺以外の全員からの強い後押しも有るんで、取り敢えず承認はしておく。
まぁ、工場やら店舗やらも潰しが利かないってぇ訳じゃ無い。どの道、代表達が『やってみたい』と言うのであれば、やってみても良いだろうさ。
俺としちゃ、前世で良く有った、『アニメとコラボした町おこし』、みたいに成らなきゃ良いなとか思うけんども。




