見せしめの意味も有る。悪いとは思うが謝る気はない
遅くなりました。
申し訳ない。
「では、預かります」
兵士の言葉に『ああ、頼む』と返す。
喧嘩を売って来たんだからボコられる位は覚悟の上だろうって事で、取り敢えず心は折った訳だが、だからと言ってそれで無罪放免とはいかないんで、一先ず勾留させて貰う事にした。
ギルドで俺達の事を野次馬していた冒険者の1人を指名して、兵士を呼んで貰い、しばらくしてやって来た兵士に二人組を渡して、冒険者ギルドからドナドナされて行った二人組の後ろ姿を見送る。
おそらく二人としては一刻も早くこの場所から離れたいだろうし、出て行った後は、二度とこの領地に足を踏み入れ様とは思わんだろうが、だからと言って貴族に喧嘩売ってんだから、その辺の罰も受けて貰わんとね。取り敢えず、今はあんまり良い罰を思いつかないんで、勾留してゆっくり考えよう。そう、ゆっくりとなぁ。
てか、不思議なのは、ああ言った阿呆な事やらかす奴等の方が、実力的に大した事がないんよね。まぁ、彼我の実力差が理解できないから、ああ言った事をやらかすんだろうが。
「なん、で?」
うん? あぁ、あの二人をボコった挙句勾留した理由か。俺の表情を見たイブがコクリと頷く。
相変わらず、俺の心を読んで下さいやがるね。まぁ、良いけど。
確かに今まで俺が冒険者ギルドでボコした相手を態々勾留するなんて事をしなかったのは、ぶっちゃけ、俺って相手の事を知らなかったからってのが大きい。今までの相手って、俺の外見を見て侮って絡んで来たってのは居ても、俺が『トール・オーサキ辺境伯』であり、【ドラゴンスレイヤー】だから喧嘩を売って来たってぇ輩はほぼ居ない。
まぁ、獣人の王国では、俺だから喧嘩を売って来てはいるが、そもそも向こうはその覚悟があっての行動だし、その喧嘩を売った事によるリスクも分かっててやってるから、問題はないんよ。
『【嘆息】問題だらけだと思います』
「そうか?」
まぁ、それは兎も角、今回に関しては、俺が【ドラゴンスレイヤー】で貴族で領主だって事が分かってたにも拘らず、見た目で侮って喧嘩を売って来たってのが問題な訳だ。それも、大多数の人間が居る目の前で、な。
それはつまり、【ドラゴンスレイヤー】が、貴族が、領主が侮られてるってぇ事で、大人数が見て居る目の前で、これに恩情なんて物を与えた場合、それは【ドラゴンスレイヤー】を貴族を領主を侮っても許されるなんて、前例を作るってぇ事に成る。
これが俺だけの問題だったら、それ程問題なんざ無いんだがね。
『【嘆息】問題だらけだと思います』
「ん!」
「そうか?」
まぁ、それはそれとして、そうなった場合、俺以外の【ドラゴンスレイヤー】や貴族や領主が侮られても構わないと思ってるってぇ風に取られかねないんよね。俺が。
当然だが、俺はそんな風には思って無いし、むしろ、それらが侮られるのがよろしくないってぇ思ってるからな。
言っちゃ何だが、その事を周囲にも分かって貰う為にも、あれらの処遇に関しちゃ、厳しくしなければいけないんよね。
私心ではなく、公的な立場としても、彼奴らには温い事をしちゃあかんのだわ。
決して『お嬢ちゃん』発言に憤っただけってぇ事では無いのだ。うん。




