サブカルチャー
エクスシーアが俺の所に許可を貰いに来たのは、聖弓が魔人族国に戻ってから、またしばらく経ってからの事だった。
「と言う訳で、肖像権が欲しいのだ」
「いや、構わんけどさ」
何でも、前に作っていたカードゲームってかTCGのキャラクターとして、【ドラゴンスレイヤー】を使わせて欲しいってぇ話だった。いや、【ドラゴンスレイヤー】ってぇだけの事なら、別に俺をモデルにする必要とかってないんじゃないかなぁとは思ったんだが、それについては、要するに“俺”ってぇキャラクターの知名度を使わせて欲しいからって事であるらしい。
まぁ、エクスシーア商会自体が、俺がエクスシーアにやって貰ってる商会ではあるんで、その商会の事業って事なら、色々と面倒かけてる自覚があるし、協力する事は吝かでないんで、俺で役に立てるなら、なんぼでも使ってくれて構わないと思う。
これ、前も思ったけど、TCG作れるだけの印刷技術が有るって、結構なオーバーテクノロジーだと思うんだが、家のドワーフ連中の技術力ってどう成ってるんじゃろ?
まぁ、俺が積極的に係って無くても技術革新が行われてるってんなら、それはそれで、この世界的にも順当に技術が育ってるってぇ事な訳だから、構わんのだとは思うんじゃが……
「随分とアニメチックな絵柄だよなぁ」
サンプルとして渡されたカードの絵柄を見て、そう思う。
そもそも、この世界の人物画って、基本的に写実の絵柄だったからなぁ。いや、それまで描かれて居たのが肖像画とかなんだから当たり前っちゃぁ当たり前なんだけんどもさ。
こう言ったディフォルメを効かせたジャパニメーションチックな絵柄って、どう成立したんだかって思わんでもない。
いや、絶対エクスシーアやらファティマやらジャンヌが関わってるんだとは思うけど……あいつら、サブカルチャーに詳し過ぎんだろうって、時折思うし。
まぁ、俺もマンガを描く為にディフォルメ効かせた絵柄では描いてたんだけどさ。そっちの方もメインでマンガを描ける人材が育ってるから、後はもう彼等にお任せって事で。いや、ネームはまだ俺が修正してるんだけんども。
ただ、こうしてエクスシーアが商売のチャンスありと考える程度には、領民の生活に余裕が有るって事なんで、領主としては歓迎すべき事柄な訳なんだわ。
余裕が無けりゃ、こんな生産性のない嗜好にかまける暇も手間も無いからな。特にカードゲームやらマンガなんて物、完全に趣味嗜好の世界だし、生きて行くだけなら、全く必要もない代物だし。
そう言った余剰にかまけられる事、それ自体は、良い事だとは思うんよね。
「まぁ、あんまり弱いカードとかに使わんでくれよ?」
「それは当たり前だ、我が主よ」
【ドラゴンスレイヤー】って物が、あんまり弱くても、『なんだかなぁ』とは思われるだろうしなぁ。エクスシーア自身も苦笑しながら請け負ってくれたんで、あまりひどいカードにはされんだろうけど、バランスブレイカーなカードにされても困るよなぁ。まぁ、その辺は調整するんだろうけどさ。
とは言え、印刷技術も上がってるらしいんだけど、基本、手作業な訳だから、それ程、大量に生産も出来んだろうし、まぁ、領内で出回るくらいだろう。
そんな風に俺は思ってたんだわ。この時は、ね。




