小手調べ程度でこれだってのがね
とどのつまり、表敬訪問ってぇ事かね? まぁ、要するに会いに来ただけってぇ事だとは思うが、ただ、ここに居るだけでも周囲に危険が及ぶ存在だってのは確かなんよね。てか、参ったな。
ここまで一瞬で懐に入り込まれると、碌な対抗手段を打てん。
俺が表敬訪問だと思ったのは、ラミアーとセフィの攻撃を防いでるだけで、反撃じみた事を邪神が行わないからだ。
だとしても、存在するだけで、周囲の生命を奪い、言葉を発するだけで、精神汚染を引き起こすわけだから、迷惑この上ないのも確かだし、こうして攻撃を受け止めて居るだけで、火花が飛び散り、空間が歪んでいるのかってぇ位に圧力が高まってるんだがね。実際、執務室のガラス窓なんかはビリビリと振動して今にも罅での入りそうな上、床や壁、柱何かもギシギシと軋みを上げている。
コレ、こう見えてもラミアーの【念動障壁】で守られてるんだぜ?
目の前の邪神がどれ程の能力を有しているのか分からんが、どうも、俺自身の力ってのは、そのサイズに対応しちまってる所が有るからなぁ。要は『デカいほど強い』ってぇ感じなんよね。
今んとこ、邪神ほどの存在を相手にする為には、俺も【闘神化】するしかない訳だが、あれ、全長で言えば15、6m級は有るから、こんな執務室の中でなんざ、使用できる訳もない。それに準じるのは【フォートレス】だけど、アレだってこんな室内じゃまともに使用できない。そもそもオファニムもケルブも居ない状態だと、俺の戦闘力自体も下がっちまう。
この前、アポリオン襲撃の時みたいに、全力を出せる状態に成れるって方がイレギュラーではあるんだが、だとしても、全力を出せる時とそうでない時の差が激しすぎるな、俺。
努力できる伸びしろが有ると思っておこう。うん。
ともあれ、今は、目の前の邪神をどうにかしないといけないってぇ事だよな?
ここまで相手している感じでは、邪神本人に悪意って物はないっぽいんだろうが、ただ、そこに居るだけで周囲の被害が半端ない上に、言葉を話すだけで精神汚染を引き起こすって、もう、本人に悪意があるとかどうとかって問題じゃないよな。
取り敢えず、コイツの影響を受けない様に【プラーナ】を循環加速させる。うっすらとオーラの様に俺の周囲に【プラーナ】の赤い光が湧き立ち、体の四肢に力を集中させる。
正直、今の俺の状態の力がどこまで邪神に通用するかは分からない。何せ、室内に居るってぇだけで、俺の力の大半が使えないなんて状態だからな。
本当に、色々と考えなきゃいけんわ。
恐らく【念動障壁】に大半の力を使用してるであろうラミアーの【念動力】も、セフィの蔦の一撃も受け止めて見せた所から察しても、結構な力が有るって事は確かなんだよな。
例え、セフィが小手調べ程度だったとしても、だ。
もっとも、それに関しちゃ邪神も同じだろうけどさ。何せ、この場に顕現するエネルギー自体、自身で賄ってる上に、ラミアー達の攻撃を防いだバリアー的なそれにしたって、特別意識して発現させたようには見えなかったからな。
顕現させるエネルギーは、前に、邪神信仰者が召喚の為に数十人からの生贄を必要としてた辺りで、察する事も出来るだろう。
ただ、ラミアーとセフィ二人の攻撃を防いでいるってぇ状況だけでも、今、この場の空間自体が軋みを上げて居るかの様に歪み、火花が散っている。
見れば、イブも自身に【魔法障壁】を掛けて居るし、ミカとバラキも赤いオーラを纏っている。
取り敢えず、邪神の意志がどうであれ、ここはご丁寧に退場していただこうかね?




