だから、ややこしいんだってばよ!
また、落ちて居ました。
遅くなり申し訳ない。
「!! 神から神託が下りました!! 『そこの胸だけ精霊をぶちのめすのです!!』と……え!?」
「うにゃ? 何か変な気配がするのニャ」
おい、光の女神、不穏当な【神託】下すなや。そして、バスト、瞳孔開いた目でヘンリエッタ王女をウザ見するな、王女が神託の事も有って脅えてる。
やっぱり、光の女神から【神託】なんぞを受ける事が出来るからか、ヘンリエッタ王女は、他の人とは何か違うのかね? 精霊であるバストがジロジロとヘンリエッタ王女を矯めつ眇めつしつつ、フンフンと鼻を利かせる様に周囲をグルグルと回りながら何かを嗅ぎ取ろうとするかの様に回り始める。何っちゅうか、こう言う行動はやけに猫っぽい。
確かに、バスト、もしくはバステトってのは、俺の前世だと猫の頭部を持った女神だったけどさ。
興味津々と言った感じでフンフンしているバストとは対照的に、ヘンリエッタ王女の方は、光の女神から不穏当な【神託】なんぞを受け取っちまった所為で、どうしてよいか分からず脅えた様に……いや、ありゃ、実際、怯えてるのか? まぁ、そんな感じで身を竦めて不安そうにバストの方を見ている。
てか、忙しかった事も有って、ヘンリエッタ王女とバストの顔合わせとか出来て無かったな。
一応、この領地に、暫く滞在しているネフェル王女の方は、軽く紹介だけはしておいたけど、今一、ピンと来ては居なかったしなぁ。
まぁ、俺にしたって【精霊】なんて存在、明確にどういう物かって言われても、何と言うか『穏やかな気質の【精霊】の眷属』って感じでしか説明が出来ないんだよな。
凄くぶっちゃけちゃえば、要は【精霊】版【魔族】の様な物なんだけど……いや、そもそも高位精神体の名称も【精霊】なら、その眷属も【精霊】って言うのがさ、その所為で色々とややこしい。
恐らく“自”と“個”の区別が無いって事なんだろうけど、高位次元に、上位存在としてバストってのが居て、その上で現世で実際に実体を伴ったバストが居るって言う感じ? 何て言うか、常に半憑依状態と言うかさ? この辺の概念も難しいな。
バストの性質としては『ラブアンドピース』で、平和主義。ある意味とても平穏な性質なんだろうけど、厄介なのは、その『ラブアンドピース』が、“強制的に引き起こされる”ってぇ事なんよね。
つまり、彼女の周囲では『敵意』やら『競争心』ってのがパッシブで萎えさせられる。まぁ、こっちがそれに抵抗出来るだけの“意思”を持ってれば、ちゃんとそう言った認識を保って居られるんだけどさ。
ただ、下手に抵抗し続けると、オーバーフローをしちまうのか、昏倒しちまうんよね。
と、ドサって言う音がしたかと思ったらクッ殺さんがぶっ倒れていた。
ってか、早速、ヘンリエッタ王女に絡んでいるバストに敵意を持ったらしいマリエルが、彼女の能力に当てられて昏倒しとるじゃぁないか!!




