いつの間にか増えているんよ仕事ってヤツは
また寝落ちをしていました。
と言うか、普通に風邪を引いた模様。
兎に角、遅くなり申し訳ない。
「やはり、ですか」
オーサキ領、冒険者ギルドのギルドマスターは、溜め息と共に、そう吐き出した。自領に戻り、冒険者ギルドに赴く。当然の様に、イブとミカとバラキ、ファティマとラミアーとセフィが付いて来た。
ティネッツエちゃんはいつもの様に母親の手伝いに。ネフェル王女は、帰路での手ごたえを確かめるべく訓練場の方へ。
ヘンリエッタ王女は、領主館の方へ置いて来た。なんぼ、俺に仕える為に来たとは言え、他国の人間だし、業務として、街の運営に係わる話も有るんでなぁ。
ゴネられたけど、こっちにだって譲れん物が有るんよ。
確かにヘンリエッタ王女自体は善良なんだろうけど、それでも『信頼関係まで築けているか?』って問われると『まだ』だって、ハッキリ言えるからなぁ。
さてさて、本来なら、用が有れば領館に呼び出す方が本筋なんだとは思うんだがね。それでも今回は、足を運ばせて貰っている。
俺だって、貴族の端くれなんだし、軽々に動き回るのは悪手だってのは、分かっちゃ居るんだけんどもさ。
何せ、自ら足を伸ばすって事は、ギルドマスターの方が俺より立場が上みたいに周囲には見える訳だしな。
ただ、今回、足を運ぶに当たっては、『抜き打ちでの視察がてら』ってぇ建前を持っての事で、態々、見に来てやってるんだ的状況にした上での話なんで、自分を下にしない様には気を付けている。
そもそも、古代遺跡をギルドに任せてるってぇ事も有って、それをやっても不自然じゃぁないしな。
いや、俺が冒険者ギルドに来たのは、急な呼び出しで王都まで行った為に、碌に引き継ぎもしなかったおかげで溜まっちまった、決裁書類の分別が終わらんので、書類の最終確認と決済をするのが俺の役割なんで、それまでやる事が無いから、その為の時間つぶし的な意味も有る。
ここで、娯楽室で時間をつぶさない辺り、結構な社畜体質だよなぁとは自分でも思う。ただ、部下ってか家臣が働いてるのに、自分だけ遊び惚けてるってのも精神衛生的に、ちょっとなぁ?
いや、こう言う考え方がダメなんだろうけど。
とは言え、態々領主館から出たのには、ミカとバラキの散歩がてらってぇ意味も有るんだがね。
『【苦笑】むしろそっちがメインでは?』
だまらっしゃい。
「オン?」
「ワオン? ワン!」
あぁ、何でもないよ、大人しくしててくれてありがとうな。
それはそれとして、ギルドマスター的にも、冒険者からの話で『魔物が増加傾向にある』って感じの報告が挙がってるって事は把握して居たらしい。
ただ、絶対的な確証が無かったんで、今迄保留にしていた様だ。
今ちょうど、統計を出してる最中だそうな。
それとは別に、妖虫の分布の変化は有ったっぽいんで、そっちに関しては既に報告済みだとか。
「多分それなら、いま家の文官連中が仕訳けてる最中だと思う」
「相変わらず、大変な様ですね」
文官も増えちゃ居るんだが、“扉”を通しての外交やら、新発見の古代遺跡やら、増えた人口に対して新しい衛星街の計画やらで、その分の仕事も増えっちまってるからなぁ。
あぁ、そう言や、国王陛下に皇国との窓口も押し付けられてたんだったか。
…………
「ちょっと、仕事思い出したんで、そろそろ戻るわ」
「本当に、相変わらず、大変そうですね」
「まぁね」




