そう言う事も有る
「お見苦しい所をお見せしました」
「いや、元はと言えばウチの聖武器がやらかした所為だから」
『【歓喜】“ウチの”と言う事はボクの事も個体名【トール】の物だと認めてくれたと言う事なのデス!!』
『【否定】ホームに居る者と言う意味で、貴女がマスターの物だと言う意味ではありません』
「おまいら今度は耐久OHANASHIだかんな」
『【謝罪】サー!! 申し訳ありません!! サー!!』
『【謝罪】ご、ごめんなさいなのデス』
聖武器達に威圧を掛ける俺の様子に、リシェルがポカンとした表情を見せる。そうだよな。ロボがこんなに感情豊かだとか普通は思わないよな。
いや、この世界だとそもそも感情のある無機物って存在が無いのか? なら、なおさら驚く……のか?
「やはり可笑しいか?」
「い、いえ、古代文明の遺産をちゃんと従えているのだなぁと」
そっちか。と言うか、もう、聖武器に意識がある事に慣れたのか? いや、そう言えば、エリス達も驚いたのは最初だけだったか。
そんな風に首を捻っていると、聖武器達が、リシェルの言葉に対しドヤ顔の雰囲気で答えた。
『【当然】当たり前です。マスターは私のマスターなのですから』
『【当然】個体名【トール】ほど、自己を極限まで高めた人間は他に見た事ないのデス』
……俺、生後2年ちょっとなんだが? それで極限て。それって、今後は伸びないって事なんかね?
それに、強さと言う意味で言えば、多分バフォメットの方が……いや、今はどうなんだ?
あー、いや、俺はファティマとオファニム込みの話だし。あ、でも、向こうも【加護】込みだしなぁ……
うん。分からん。
ちょっと考え込んで溜息を吐く。その様子にリシェルがクスリと笑った。ぬう、ちょっとネガティブな所を見せちまったな。
気持ちを切り替えよう。
「それで、どうする? 謝罪の意味も込めて【詠唱破棄】を教えさせても良いけど」
聖槍が『【面倒】ええ!!』とか言ってるが、お前はもう少し反省が必要か? 『シャイニング・ウィザードから始まる空中殺法48手』が必要か? なぁ。
『【優越】良い気味だと思います』
「そのかわり、ロボウィザートに名前を付けようと思います」
『【悲鳴】そんな!! マスター?』
こっちはお前への罰だファティマ。
そう念話を送ると、ファティマがガックリと膝をついた。そんなにか。そんなに嫌か、聖槍に名前つけられるのが。
『【歓喜】そう言う事なら、いくらでも教えるデス!!』
お前も大概現金だな。おい。
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『【予測】流石は凡人人間デス。後3年くらい修行したら習得する見込みも有るんじゃないかと言う気がするデス』
「は、はい……アリガトウゴザイマス」
「言い方!!」
棘のある言い方に思わずツッコミを入れちまったわ。どうも聖武器、才能ってやつが有ったり、個体で高い戦闘力を持ってるやつには敬意を示すんだが、彼女等基準でそれに満たない相手にはちょっと辛辣なんだわ。
まぁ、そもそも旗印にって造られたらしいから、そう成るのも分からんでも無いがね。
これが、持ち手を選ぶ武器ってやつか。
で、四時間ほどミッチリとロボウィザードに【詠唱破棄】を教えて貰ってたリシェルがこちらです。
うん。見事な死んだ魚の様な目だ。その上で習得できなかったのが、もうあれだね。うん。
やっぱイブさん半端ねぇっす。マジ天才。
謝罪のつもりでロボウィザードに頼んだのに、これ、逆に申し訳なさ乱れ撃ちなんだが!?
この状態で帰すのも心配なんで今日は泊ってってもらうか。部屋あるし。
マァナとキャルに頼んでリシェルを案内して貰った後、オスローに『緑風の調べ』のパーティーが泊ってる宿に言付けを頼む。
ちょっとアレな感じに成っちまったリシェルにオロオロしてたイブの頭を撫でてからオファニムを脱いだ。
途端にミカとバラキが飛びついて来る。今日は生身で触れ合って無かったからな。リシェルが居たんで、オファニム脱げなかったし。
さて、何か忘れてる気がするな……あ、第二夫人の所、行ってなかったわ。約束したからなぁ。また拗ねられても面倒だし、行くかぁ。もう結構遅いけど……
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「お見苦しい所をお見せしました」
「いや、元はと言えばウチの聖武器がやらかした所為だから」
行った時に既に夜だったせいもあって「遅いよぉ」って、第二夫人の所で猫かわいがりに可愛がられて来た翌日、どうやらリシェルも立ち直ったらしくて態々頭を下げに来た。
いや、第二夫人。隣国のお姫様だったんだよね? いや、姫だったんなら、あれくらい箱入りぽくて当たり前なのか? ちょっと幼児退行気味に思えるが。 あれ? 隣国? ……いや、まぁ良いか。
一通りの謝罪合戦のが終わり、リシェルも帰り支度を始める。オスローに言伝を頼んだとは言っても、パーティーメンバーが帰らなかったのも確かだし、アルトも心配してるだろう……いや、心配してるのはダンダかな?
そろそろ帰り支度も終わったかな? と思って彼女を見ると、不思議そうな目で俺の事を見てる。
何じゃろ? 俺のナイスミドルな魅力に魅了されたんか? いや、冗談だけど。
第一、今はオファニムに搭乗してるんで顔見えんしな。
「何だ?」
「ああいえ、トール……さんは、いつも鎧を着こんでいるんですね……と」
ああ、そういやそうだよな。むしろ昨日、何も言わなかった方が不思議なくらいだったわ。
さて、どうすっかな? 誤魔化しても良いんだけども……
「端的に言うと、素顔を出すと問題があってな」
俺の言葉にリシェルの顔が強ばる。
「犯罪者って訳じゃない。まぁ、訳アリではあるが、貴族の社会は色々あると言うのはアンタも理解できるだろう?」
そう言うと、途端に彼女の表情に理解の色が広がる。
「そう、ですわね。色々ありますから……」
リシェルにも色々とあったらしいね。てか、これで彼女が貴族子女だって事に確信が持てたわ。貴族の令嬢らしき人物が、20才で冒険者なんてやってる時点で、色々事情は有るんだろうって察せるがね。
ただ、実家と連絡を取り合えるって事は、最悪の関係って訳じゃなさそうなのが救いか?
どっちにせよ、俺が嘴を突っ込む様な事ではなさそうだけどもな。




