押っ取り刀で駆け付ける
「まぁ、戯言はこの位にして、貴様には相談があってな」
「……何でしょう?」
態々、呼び出したってぇ事は、直接話さなきゃ成らん事があるってぇことだろうからな。
基本、ルーガルー翁経由で手紙でのやり取りでも、問題はない筈なんだ。にも関わらず、直接顔を合わせなきゃ成らんって事は、相応に理由が有るんだろう。
もし、さっきのが“そう”だってんなら、色々と考えなきゃ成らん所だが。
「うむ、相談とは、学院の方針の事でな」
「それを決めるのがトップの仕事じゃ無いんですか!?」
何で俺に聞こうとする。ってか、方針も決めずに学院なんて物、創ろうとかしてるんかい!!
「いや、大筋は決まっておる。決まっては居るのだ」
「なら、尚の事、俺に相談する事なんて無いと思うのですが?」
大筋が決まって居るってのなら、それを骨子に具体的な肉付けをして行けば良いだけだ。態々俺を呼び出してまで相談する事なんざ無いと思うんだが?
「大筋は決まって居るのだが……実はその内容で揉めて居るのだ」
「はい?」
いや、内容でって、何でさ。例えば社交であるなり、経営であるなり、そう言った事を教えて行けば良いだけじゃん?
「貴族の子弟が家庭教師によって学問を学んでいるのは知っているな?」
国王陛下の言葉に、俺は首肯する。てか、基本的に貴族連中は、そうやって学んでいるからな。で、教え方が上手かったりってぇ人物なんかは、ご婦人方のお茶会なんかで話題が上がって、それが次に繋がったり、その評判次第で引っ張りだこに成ったりする訳だ。
「家庭教師に学ぶと言うのは、まぁ、個人個人での学業の進み方に、差が有ると言う事であろう?」
「ああ、成程、何処を基準にしたら良いのかが分からないって事ですか」
「うむ」
理解度に合わせてと言えば聞こえは良いが、つまりはその人その人で、勉強の進み方、進め方が全く違うってぇ事でもある。
つまり、一か所に集めて教えようと思っても、個人差が大きすぎて、何処をフォーカスして良いか分からないってぇ事な訳だ。
特に、法服貴族でもない限り、“出来る様に成ったなら手伝って貰う”ってぇスタンスで領地経営何かはする訳だからな。
勉強の進み方なんてのはバラバラでも別に構わないってぇ事に成る。
「だとしても、何故俺に聞くんです?」
「貴様の領地では、ほぼすべての住人に教育を施しているそうではないか」
「ああ」
まぁ、俺の場合は文官が必要なのに、全然、来ないんで、自分達で教育するしかあんめぇってぇ言う、若干情けない理由からではあるが、それでも文字の読み書きや計算の基本の基本位は教える様にしている。
俺的には、住人の文化度が上がるのは望む所ではあるからね。確かに、住人全体の知識的な物が豊かに成れば、そう言った住人の中から、自身の生活を向上させる為に政治についての私見を持つ者も出て来るだろう。
そうやって、無際限に政治に関心を持たれる事自体、為政者としては歓迎できない事態だとは思う。
それでも俺が、教育って物を必要だと思うのは、それが住人の幸福に繋がるからだ。




