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「こんな事、聞いて良いのかどうか分からないんだけど……」


 リシェルが申し訳なさそうにそう言った。何じゃろか?


「イブちゃん、何処で【詠唱破棄】を覚えて来たのかしら?」


 ああ、その事ね。流石にイブの魔法の師匠って所か。この間、魔人族の国に行く時に聖槍(ロボウィザード)が面白がって教えた訳だが、これって言って良い事なのか? 一応、聖武器(アレ)って魔人族の国の国宝だよな? 特に口止めされてはいないが、バレると面倒事になる様な気がしないでも無いんだが?

 どう思う? ファティマ。


『【当然】マスターが言っても良いと思えば、言って良いと思います。聖槍の所有権は今、腹立たしい事ですが、マスターが握っていますから……腹立たしい事ですが』


 おおう、二度言うほど。気にくわない訳ね。決定したのゴドウィン侯だけど。

 で? 言った場合、面倒事には?


『【肯定】“なる”と思われます。マスター』


 ああ、やっぱりか。

 だとしても、下手な言い訳だと、絶対に納得しない気がするんよね。


「……絶対に口外しないって約束できるなら、教えん事も無い」

「おいおい、アルトは『相変わらず』っていってたが、ちょっと、天狗になってんじゃ……」

「ダンダ、邪魔です。それで魔術の奥義を覚えた秘密がわかるなら、いくらでも。あ、【契約の魔術】で縛って貰っても構いませんよ?」


 俺に文句を言おうとしたダンダを押しのけ、リシェルがそう言って来た。

 てか、【契約の魔術】って何?


『【解説】お互いの魂に【契約】と言う枷を掛ける【魔術】です。マスター。この【契約の魔術】を使う事で、契約の履行と罰則によって、相手の行動を縛る事ができる様になります』


 魂にって、それ、結構怖い術じゃね?


『【肯定】それくらい知りたいのでしょう』


 いや、口約束程度で構わんのだがね。てか、魂に干渉できるんな魔術って。


『【肯定】マスターのプラーナも魂の力ではありませんか。それに、魂に干渉できなければ、ネクロマンサーの術は成立しませんし』


 ……え? プラーナってそう言うもんなん? へぇ、ネクロマンサーって存在するんか。じゃ、ゴーストとかゾンビ―とかも居るんかね? ああいや、でなくて、そうか、死霊魔術(ネクロマンシー)ってば魂に干渉せんと出来んもんな。納得納得。


「で、どうなのですか?」

「別にそれ位なら口約束で構わんよ」

「え? 魔術の奥義ですよ!?」


 安請け合いに見えたんだろうかね? リシェルが目を瞠っている。と言っても、俺が魔人族の国宝である聖武器を持ってるって事を喧伝しないでくれれば良いだけの話なんだが……うん? もしかしてリシェル、【詠唱破棄】を教えて貰おうとか思ってるって事か? 奥義奥義言ってるし。

 それ位ならイブに直接言えば良いじゃろに。


『【予想】個体名【イブ】のお師匠様と言う事ですから、教えを乞う事に躊躇いがあるのでは?』


 ……ああ、そう言えば、イブもまだ5歳くらいなんか。確かに20才が5歳に教えを乞うってのは羞恥心が前に出るか。

 てか、そこまでして覚えたいもんなんだろうな【詠唱破棄】。奥義だって言ってたし。

 何気に凄いんな聖槍(ロボウィザード)


『【称賛】ですが、教えを受けて即座に【詠唱破棄】を覚えた、個体名【イブ】も凄いと思いますよ。マスター』


 まぁ、イブ、天才だし。


「じゃ、ちょっと、リシェル連れてくぞ?」

「おいおい、そんな勝手な……」

「ダンダ邪魔です。行きましょう! すぐに!!」

「お、おう」


 ******


 と、言う訳で教会(きょてん)に戻って来た訳ですが。


「は? え? 国宝? え? 聖武器? でも人型で、え? しゃ、喋って!?」


 リシェルが機能不全を起こしたよ。


「はい、イブさんに【詠唱破棄】を教えた、魔人族国国宝の聖武器の一つ、知性を持(インテリジェ)つ武器(ンスウェポン)の聖槍ことロボウィザードさんです」


 やっぱり、属性過多だよな。これじゃ、リシェルが情報処理不全になっても可笑しかないよね。


『【訂正】いえ、マスター。個体名【リシェル】が戸惑っているのは、そう言う意味ではないと思われます』


 うん、知ってる。


『【確認】んで? ボクは、この人間に【詠唱破棄】を教えれば良いのデス?』

「さぁ? 本人が教えて貰いたがったらで良いんじゃね?」

『【提案】じゃあ、教えて貰いたがったら、【詠唱破棄】を教える代わりに、名前を付けて貰って良いデス?』

『【浅慮】何を想い上がっているのでしょう、この女狐は。教えを乞うのが、個体名【リシェル】なのだから、対価は彼女から貰うのが筋でしょう?』

『【拒否】えー、だって、この人間から貰えそうな対価なんて、それほど価値がなさそうなのデス』

『【肯定】確かに、個体名【リシェル】は凡人で、彼女が個体名【イブ】に魔法を教えているという事が奇跡の様な話だとは思いますが、それでも、【詠唱破棄】を教えて貰おうと言うのは彼女なのですから、その対価をマスターに求めるのは筋違いだと思います』

『【反論】でも、その平凡人間を連れて来たのは、個体名【トール】なのだから、その責任の所在は彼に有るのデス』

『【笑止】マスターはあくまで仲介者に過ぎません。なので、どれ程価値が無かろうと、その対価を求める相手は個体名【リシェル】になるでしょう』

『【否定】でも、ノブレスオブリージュに則れば、“持てる者”が“持てぬ者”に施す事が正しいのデス。ならば、この話を持って来た者として、無価値人間の代わりに個体名【トール】には施しを与える義務が生ずるのデス』


 だから喧嘩すんなや!! てか、おまいらの発言のせいで、リシェル涙目じゃんか。やめてあげて! 彼女のHPはもう0よ!!


「……で、えーと、コイツがイブに【詠唱破棄】を教えた訳なんだが、何か質問ある?」


 そう言って彼女の方を見ると、部屋の隅で体育座りになったリシェルが、頭にキノコ生やしながら黄昏ていた。


「いえ、良いんです。わたしみたいなクソ雑魚ナメクジな無価値女なんて、国宝の聖武器様に教えを乞おうとか、それ以前にお声を掛けをしようなんて烏滸がましかったんですわぁ」


 ……うん。ダメかな?

 とりあえず聖武器二人に、ムーンサルトからのフライング・ボディーアタックの上で、スピニング・トゥホールドを掛け悶絶させ、リシェルには全力でDOGEZAをしましたともさ!!

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