いや、何でよ
「王立学院に、通ってみる気はないか?」
「有りません」
てか、有り得んだろう。俺の公称17才よ?
何か王城に緊急呼び出しとか掛かったから、『潜伏魔族関係かな?』とかって思って、押っ取り刀で駆け付けてみれば、冗談はよし子さんと来たもんだわ。国王陛下さんよぉ。
「って、言うか、王立学院なんて物ありましたっけ?」
少なくとも俺は知らんし、王都にそんな施設なんざ無かった。そもそも庶民は基本お勉強なんて物はしないし、むしろ必要なのは職業専門学校系な気がする。
かと言って、貴族連中のお勉強は家庭教師ってのが主だし、その家庭教師そのものが、貴族の次男以降の救済処置的面もあるから、それと競合する様な、学院って形の物は無かったと思う。
「うむ、今度、創立する事と成ったのだ」
「尚の事、俺を行かせたがる意味が解りませんが?」
今度作るて。って、事は、これから貴族子弟の選別とかするんだろうし、もしかしたら庶民からも優秀そうな子供をスカウトするとかするんかね?
ただ何にせよ、俺が行く様な必要は1ミリセコンドもないと思う。学院ってぇ事は、何かを勉強する為の施設な訳だろう?
既に辺境伯として政務に精を出している以上、何かを学ぶ為に学園とやらに行くってぇ事自体に意味がないじゃん?
第一に、学院に行ったとして、その間の領地の管理は誰がやるんだってぇ話になる。
確かに今迄も、長期に渡って領地を留守にする事は有った。だけど、それはその間に問題が無い様に仕事を前倒しで終わらせたり、政務を調整したりして時間を作ってでの事だ。
学院に通うって成ると、恐らく年単位で政務から遠ざかる事に成る。もしかすれば、年何回か、長期休暇が有って、その間にどうにかしてくれってぇ事なのかもしれんが、そんな忙しない目に合う位なら、学院なんざ行きたくもない。
「うむ、貴様は社交にあまり出んだろう?」
「そりゃ、領地経営が有りますし」
そもそも社交に関しては、第二夫人に一任してるからなぁ? それでも、新年式典とかちゃんと参加してるじゃんねぇ。
「その所為で、貴様に関しての様々な噂が独り歩きしていると言うのも有ってな」
その話を聞き、俺は顔を顰める。婚約破棄騒ぎが有ったのもそれ程昔の話ってぇ訳じゃ無い。確かに、アレも、俺の名前ってか、【ドラゴンスレイヤー】ってぇ名前が勝手に使われたからだしなぁ。
「と言うか、貴様とお近づきに成りたいと言う貴族が多くてな」
「ぶっちゃけましたね」
「これ以上夜会等を増やしたとして、貴様は参加せんだろう?」
「しないですね」
で、学院に通わせて、その間にお近づきに成れる機会は与えたよってぇ名分を得ようって事か。
「だが、断る!!」
「そうか、残念だ」
何だろうな、理解は出来るけど納得はせんよって感じ。




