日常が戻って来た、と言うか
アポリオン襲来から数週間が過ぎ、街はいつもの様相を取り戻すって程もねぇ。だって、アレの襲来で被害とか受けてねぇもん街には。
とは言え、変化が無いって訳でもない。特に俺の周辺。具体的に言うと、ネフェル王女が張り切ってるんよね、異様に。
「人類最高峰の戦いと言う物を見せて貰えました!!」
「……いや、あの戦いを【人類】ってぇカテゴリーにするのもどうかと思うんだわ」
「そうなのですか?」
アポリオンは言わずと知れた魔族な訳で、所謂『人間辞めた』存在な訳じゃん? 俺は人類ではあるけど、使っている力の根源である【プラーナ】そのものは、【闘神】と言う、言わば現人神が使っていたソレと同じな訳で、しかも、lこの【プラーナ】自体は、生命の根源を成すエネルギーであり、【魔力】やら【オド】やら【神聖力】と言ったエネルギーを現世に導く為の“触媒”と成る力で、この【プラーナ】を触媒に、その数倍近い【魔力】やら何やらを引き出せる。
故に、本来なら【プラーナ】自体はそれ程大量に保有してると言う事は無いらしいんよね。俺の戦い方ってのは【プラーナ】を湯水の様にバカスカ使うんで、これを他の人が同じ様にやろうとか思うと、即座に枯渇するらしい。なんで、一寸、いや、かなり、“普通の”人類の戦い方とはかけ離れてると思うんよね。いや、まぁ、俺は人類だけんども。
そう言った意味でも、普通の人とは戦い方が違っているんで、あれを『人類の最高峰』とか言われると、語弊が有ると言わざるを得ない。
とは言え、普通に魔法での【身体能力強化】は存在するんで、近しい戦い方は……できなくも無い様な気もしないではないと思うんだが、どうだろうか?
いや、俺は逆に魔法を使えんから、どう言った感覚なのか分からんのよね。魔法……使えないから……
まぁ、それでも、相手の攻撃の『起こり』を読んだり、そう言った『起こり』を消したり、フェイントを仕掛けたり、逆にフェイントで罠に嵌めたりと言った、“技術”的な部分なら参考になるかも知れんがね。
まぁ、もっとも、ソレが見えて居たか? と問われれば無理だったんじゃね? とは思うが。
「もはや、目では追えない攻防の数々。人とは、あれほど高次元での戦いを出来るのだと思ったのですが……」
ああ、やっぱり見えて無かったんかい。そして次元が違うのは、もはや当たり前で。だって、一方は魔族ですしおすし。
「まぁ、目指すのは悪い事じゃぁ無いとは思う」
人ってのは割と認識次第で出来たりできなかったりするからな。あの戦いを人が出来るものだと認識するのであれば、近しい所まで技術を引き上げられるかも知れないからな。
そう思い、俺が口にすると、ネフェル王女は嬉しそうに頷いた。
「はい!!」




