殴りかかりながらも嗤ってるんだぜ?
遅くなりました。
申し訳ない。
魔族が半精神体で在り、その体を構成する物の殆どが【オド】と呼ばれる生体磁場によって形成されているってぇ事を考えれば、【オド】を凝縮するって行為は、最早、単純な身体エネルギーの向上でしかない。
つまり、お手軽にパワ-アップ出来る手段ってぇ事に成る。
いや、話としては、そう簡単な物じゃぁ無いんだろうけんどもさ。多分、【オド】凝縮に関する制御やら、凝縮した【オド】の扱い方やら、おおよそ難易度的には厳しい物なんだろうとは思う。
俺で言えば魔力外装を自由自在に変形運用しようとする様な物か?
【エクステンド】がそれに近い物かも知れんが、あれだって予めイメージとして確立している幾つかでしか運用できていない。
まぁ、魔力外装は単なる金属の塊を纏っているってぇだけなのと使い方は変わりないが、【エクステンド】は内部にモーターやらICやらを仕込んで、それを“脳波コントロール”で動かしてる様な物だからな。その操作における難易度は段違いだ。
ああ、成程、その辺りがブレイクスルーに成るかも知れんのか。脳波でと言うか、俺の行動を先読みする様な感じで、オファニムが動いてくれているてぇ事も有って、ある程度の速度を維持できているが、魔力装甲の方は、あくまで装甲でしかない。ソレを纏っている俺が動かなけりゃ動いてくれはしないってぇ事な訳だ。
その辺りの所をどうにか……
ゴ、ゴウッ!!!!
っと、悠長に考え込んでる場合じゃ無かった!! ファティマを回転させ、柄を使って同時に行われた二つの攻撃を受け、いなす。
って、柄が軋む!! 拙い!!
俺は、瞬時に肩部噴出孔を使って、後方へと飛び、威力を逃がす。あのまま、まともにやり合ってたら、いくら俺の【プラーナ】で保護してるとは言え、ファティマが持たなかったわ。
『【謝罪】私がもっと丈夫であれば!!』
いや、これが普通に魔物相手だったりすれば、問題なんてないんだ。こいつは敢えて相手が悪いと言おう。
大体、最上級と言って良い強化タングステンに俺の【プラーナ】を纏わせて居るにも拘らず、それを軋ませるアポリオンの膂力が可笑しいんだから。
俺の事を追いながら、ラッシュを仕掛けて来るアポリオンの攻撃を後ろに飛んで威力を受け流しつつ、ファティマで捌く。
白兵距離のままの攻防になったおかげで、さっきの様に一瞬で距離を詰められ、攻撃の出だしを見失う事が無くなった事も有って、何とか防御は出来て居る。
ただ、それだけだ。
ここから反撃をするだけの余裕が無い。全くの防戦一方に成って居る。一発一発の威力が段違いに成ってる所為だ。
ただ、アポリオンの能力としては腕はスピードと言うより力が上がってるが、脚の方はスピード特化と成っている様で、余裕で俺の動きにピッタリと着いて来やがる。
とは言え、攻撃そのものも、正直、目で追える速度って訳じゃ無い。それでも何とか成っているのは、流石に生物としてのソレは逸脱していないらしく、攻撃の起こりを捉えられるからだ。
要は、今、俺は、攻撃を予測して防御しているってぇだけの話で、半ば勘で捌けているってぇ事な訳なんだわ。
ただ、反撃が出来ない以上、どう足掻いたってジリ貧にしか成らない。どうにか、反撃の糸口を作らんとな。




