伊達ではなかったよ
互いを認め、一呼吸。一足飛びに接敵する。
早い!? やはり外骨格故の筋肉量の差か!! まるで腕が伸びたかの様に俺へと迫る。
予想外のスピードに予想接敵地点がズレ、威力が完全には乗らない。
あれ? アポリオンの姿は遠い!?
「って! 普通に腕が伸びてるじゃねぇか!!」
『【嫌悪】気色が悪いですね』
「ほほぅ? 良くぞ初見で見破った!!」
いやいや、分かるだろう! こんなモノ!! 凄いスピードかと思ったら、ズ◯ムパンチだったでごさる。
確かに素手だと獲物を持っている俺相手だと不利に成る。だからと言って、誰が腕そのものを伸ばす等と思うか!!
素手と言うには凶悪な外骨格の刺々しい腕と、聖なる斧が打ち付けられ合い、火花を散らす。
伸び縮みする腕のせいで、間合いが分かり辛い!!
一度、二度と刃が交わり、跳ね返され、返す刀で再び交わる。スピードタイプ改めトリッキータイプかと思えば、威力も高い。俺が力で押し込まれるとか、どんだけだよ!!
つまりは基本的に筋力自体が高いってぇ事か! 全く存在自体が理不尽だわ!!
チッ、このまま食い合って居ても埒が明かないか、なら、一度受け流して仕切り直しに……!! 俺が受け流そうとして刃の側面で滑らそうと試みると、アポリオンは腕を捻る様にして、ファティマの刃を棘に居っ掛け、巻き込む様に引き戻そうとする。
拙い!! このままだと体勢を崩される!!
俺はファティマを強引に捩じり、アポリオンの棘を外して、担ぎ上げる様に構え直す。が、その引き際に合わせられ、抜き手を叩き込まれる。しかしそれは、何とか腕を捩じり込んで、ガードする。
『【確認】マイマスター!!』
「大丈夫だ」
とは言え、アポリオンの膂力での一撃、ガードした腕が痺れ、今一力が入らなくなる。が、【プラーナ】の循環を加速させ、それを瞬時に回復させ、追撃の手刀をファティマで受ける。
「ほう? 流石は数多の魔族を退けた事が有る様であるな!! 素晴らしい!! 破壊のし甲斐が有る!!」
「嬉しくない評価だよ!!」
そう言いながら仕掛けて来た攻撃をファティマで受け、弾く。
数多の魔族を退けたて……身に覚え有ったわ。つまり、【闘神化】の事だけじゃなく、数多の魔族を退けている事でも目ぇ付けられてるって事かよ!! 思い返せば、俺、結構な魔族と戦ってるんだったわ。
一生のうちで会う事すら珍しく、むしろ会わずに生きてる人間の方が多い筈の魔族に、俺、遭遇し過ぎじゃね?
ゴオォンッッ!!
って、アブねぇ!! アポリオンの蹴りをスウェイバックで避け、って避けきれん!! 俺は慌てて肩部噴出孔から上部に【プラーナ】を噴出させ、緊急避難をする。いや、『ゴオォンッッ』て、空振りして出して良い音じゃ無いんじゃが!?
まるで丸太でもぶん回した様な音を響かせる蹴りに、冷や汗が流れる。てか、やっぱり足も伸びるのかよ!!
「これも初見の筈なのであるが、うむ! やはり噂にたがわぬなっ!!」
「いや、流石に小さい蹴りすら出して来ないってのは、わざとらしすぎるだろうよ!!」
「ふむ、それは失敬!!」
それに手が伸びるなら、足だって延ばせるだろうさ!! どこぞのインド人格闘家とかそうだし!! 予想出来たわ!! 有り難うダ〇シム!!
足が伸びる所為で、その引き際に合わせても懐までは潜り込めんか。ならば、逆に間合いを取る。
仕切り直しばかりに脚部噴出孔から逆噴射て【プラーナ】を噴出させ、一足飛びに間合いを開けた。一息で呼吸を整え、ファティマを構える。
トリッキーな動きで後手後手に回っちまったが、同じような展開にはするつもりはねぇ。身体も温まって来たし、そろそろ反撃と行きましょうか!!




