異質ではあるが当たり前の精神
昨日に続いての寝落ちと言うか意識を失ってました。
遅くなって申し訳ない。
「まぁまぁ、落ち着いて下され、拙僧、オーサキ殿を害する気しか無いですので」
「落ち着いては居るさ、落ち着いて居るから、害する気しかないとか言ってる輩相手でも、こうやって冷静に対処してるんだからさ、ただ、物騒な事を言っている相手に、それなりの警戒を怠るってのは有り得んだろうよ」
まるで、聞き分けの悪い子供を相手にしてる様な感じの言い回しで、何ちゅう物騒な事言ってやがるかな? この悪魔は! 言ってる事のアレさ加減と、物静かな雰囲気のギャップが酷いわ。悪い意味で。
自分の言葉で、こちら側の警戒度が一段アップしたと気が付いたらしくアポリオンは苦笑しながら口を開いた。
「いやいや、勘違いしないでもらいたい。『害する』とは言っても、叩きのめし、蹂躙し、尊厳を踏みつぶそうと言うだけの話なのであるから」
「何も勘違いに成って無かったんじゃが!?」
何かもう、今迄会った魔族の中で、断トツに言ってる事が物騒極まりないんだけれどもさぁ!!
言ってる事が物騒な割には、物腰は穏やかだし、理知的に感じる。
いや、成程、確かに名は体を表してるんだろう。この魔族、本当に“破壊者”でしかないのかもしれない。つまりは、破壊する対象以外に、その意識が行って無い。要は逆説的に破壊する対象にだけ意識が行ってるってぇ事なんだろうさ。
好意にしろ敵意にしろ、それは『関心が有る』ってぇ事だ。『好意の反対は無関心』と言う言葉が有る。つまりは、アポリオンにとっては破壊の対象以外は無関心だってぇ事なんだろう。だからこそ、その対象の事だけは興味があり、興味を引きたい。
だからこその誠実さ。本気だからこそ本音で語ってるってぇ事な訳だ。
事によっては『無関心』を『無視する』事だと勘違いしている者も居るが、本当に無関心な相手ってのは、まるで『普通に』相手をする。
これは、人間が社会性を持つ生物だって事も有るが、『無視をする』ってぇ行為だって、それは相手を意識してるからこそ行う事だ。普通に社会性のある者であるなら、殊更好意も抱いてない相手に対しては、まるで道行く人に対して行う行動の様に対応する。
つまり、肩がぶつかれば、目礼するか謝りの言葉を掛けるか、『何だ彼奴は』と不機嫌になるか、ただ、何にせよその後は直ぐに忘れる。
無関心だからこそ、一時の感情の波は有れど、直ぐに興味が無かった精神状態に戻る訳だ。
決して、無関心だからと、わざわざ踏みにじる様な事すらしないってぇことだな。
そう考えると、アポリオンは、随分と俺に対して興味を抱いてくれて居るとも言える。
なら、変に敵愾心を持って話を拗らせる方が悪手か……
「……分かった、話を聞こう。具体的には俺を害する為に、どうしたい?」
魔族に合わせて話をすると、俺の方の会話の内容も頭おかしい感じになるな。
あぁ、やっぱり、魔族ってのは基本的に人間と相容れんわマジで。




