ヤバミ高めだったでござる
またしても寝落ちです。軽いめまいの後に後ろに倒れていたもよう。
あれ。これ、寝落ちですよね? 貧血でオチたとかではなく。
まぁ、兎に角、遅くなって申し訳ない。
「お初にお目にかかる、トール・オーサキ辺境伯殿。拙僧は、旅の僧侶でアポリオンと申す」
応接室の俺の目の前に腰掛けるのは、身の丈2mは優に超える僧形の男。いや、これはこれでツッコミ所しかねぇんだが、先ず第一に、この世界に僧侶っているんな。てかつまりは『悟った人』とか居るってぇ事かね?
ただ、その姿はアレだ横〇光輝の梁山泊とか仮面の忍者なんかに出てきそうな感じの、剃髪髭面で、でっかい数珠を肩に掛けてる様な感じのソレ。
念仏唱えるより、その巨大数珠で敵を叩きのめしてそうな感じ。修行ってのはつまり武者修行ってぇ事かね?
「見ての通り“破戒僧”だ!! 名は体を表すと言う諺の通りだなっ!!」
よし、一寸待とうか! アポリオンは“破壊者”であって“破戒僧”ではない!! 確かギリシャ語だったか? てかギリシャ語て。いや、前世との類似ツッコんでもしょうがないんでツッコまんが!!
それよりも!! 俺は、その一瞬で警戒をMAXまで上げると、【プラーナ】の体内循環を加速させる。
そんな俺の反応に合わせるかの様に、足元に控えていたミカとバラキが臨戦態勢を取り。給仕をしていたイブと俺の後ろで待機していたファティマも、何時でも動ける様に、少し構える。
恐らく、隣室のラミアーとセフィもそうだろう。
ただ、俺の目の前のアポリオンだけは悠然とした様子で、お茶に口を付けていた。
「随分と、余裕だなぁ? 魔族さんよ」
魔族、そう、魔族だ。アポリオン、別名アバドン。こっちに成ると確か意味は『奈落』。一説によると堕天使ってぇ話だが、まぁ、それは飽くまで、前世での話だ。
ただ、今迄、魔族と相対して来た経験からすれば、俺の前世で“悪魔”でっあったモノと同じ名前を持っている、この世界の住人は、例外なく魔族だった。
その法則からすれば、目の前の破戒僧も魔族だってぇ可能性はかなり高い。
そんな魔族が俺の所まで来た。その理由なんざ一つしか無いだろう。つまり、俺を倒して名を上げるってぇ事だ。
あぁ、同席しているネフェル王女がオロオロしている。何が起こって居るのか理解が及ばないんだろう。
旅の聖職者だってんなら普通に警戒する事なんざ無いだろうし、この世界の人間には、名前だけで相手が魔族かどうかなんて事、判断なんざ出来ない。
こいつは飽くまで、前世の記憶を持って居る、俺だから気が付く事が出来るってぇ代物だからな。
表面上は、お互いにソファーに座り、相対しているだけの様に見えるが、その間にある空気は、既に先ほどまでとは違い、かなりピリピリとした物に変わっている筈だ。
魔族が来るだろう事は予想していたし、心構えもしていた。それでも、こう真正面から、それも、聖職者を名乗りながら来るとは、流石の俺も、一寸、想定外だったわ!
いや、魔族ってぇ存在が、邪神の【加護】を得て成る存在であるなら、それも可笑しか無いのか?
ただ、何にせよ目の前の魔族であろう男は、未だ何の反応も見せず、落ち着いた様子でお茶を啜っている。大したもんだ。それとも、自身の強さに、それ程迄に自信があるのか。
何にせよ、厄介事になりそうだと思っては居たが、まさか、ここまでの厄ネタだったとは、このトール・オーサキ辺境伯の目を以てしても、見抜く事が出来なんだわ!!




