OHANASHIを制する
その瞬間、俺は思わず握っていた拳を天へと突き上げ、勝ち鬨の声をあげた。
俺の足元には倒れ伏した髭面達の群れ。その屍山血河の中心に、ただ一人立っているのは、転がされたオッサン達よりもあからさまに華奢な少年と言う、謎光景な訳だが。それを見て盛大な拍手をするイブとティネッツエちゃん。狂喜乱舞してはしゃぎまわるミカとバラキ。彼女達よりはテンション低めだが、それでも『おぉ~』と感嘆の声を上げるラミアーとセフィ。
それらの反応も見つつ、満足げに頷くファティマ。唯々困惑するネフェル王女とヘンリエッタ王女、ついでに女騎士。
長い、長いOHANASHIを制したのは、誰もが予想した通り俺ではあったが、その過程は、誰もが予想しえなかった程に過酷で険しい物だった。
てか、タフ過ぎんだろドワーフ共。いくら俺がパッシブでの【身体能力向上】しか使ってなかったとはいえ、ここまで粘られるとは思わなんだわ!!
にじり寄って来るドワーフ共に、上手投げ、下手投げ、小手投げ、すくい投げ。はり手、けたぐり、うっちゃり、河津掛け。
転がっては起き上がり、すり足でにじり寄って来るドワーフ共はさながら稽古場の新弟子の様相で、中央から動かずその相手をしていた俺は、見事な横綱相撲だったと言うのは、ファティマの弁。
『報告忘れてんじゃねぇよ!!』『正直済まんかった!!』と言う肉体言語を駆使した対話は、7時間36分を持って、終了した。
まぁ、良い稽古には成ったけどさ。
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さてさて、ドワーフ達の言ってた研究室ってのは、彼らに宛がってた鍛冶場やらドワーフ達の住んでるエリアから、勝手に掘られた、大森林方面へと延びる地下道から繋がる地下施設で、爆発なんかの危険性のある物の実験研究はこっちの方でやってたらしい。
いや、確かに『この辺、好きに使っちゃって良いから』とは言ったけんどもよ、まさか、地下に研究施設作るとは思わんじゃん。
だからと言って、ドワーフ達の居住区や、ましてや領主館の中に造られても、確かに困るんだけんどもよ。
せめて一言、報告が欲しかったわ。
なんぼ、最近はコボルト達のおかげでトンネルを掘る事自体が少なく成ってるとは言え、ドワーフ達も地下トンネル掘るのは得意だからって事で、自分達で地下施設を造ったからとは言え、さ。そんな重要な施設を領主である“俺”が知らないとか、言い訳も出来んからな。




