信仰心
「正直な所、父王様は、政略結婚と言う事は、意識して居ないのです」
「そうなの?」
「むしろ、信仰の拠り所だと聞いて居ますので」
あぁ、まぁ、その可能性は高いと思ってたけど、やっぱりか。どちらかと言えば、信仰心の方が高いタイプだよなぁ。信仰の求めるままに50人とか子供作る様な人だし。
まぁ、聖王国としてはそっちの方が正しいんだろうけど。
「そもそもが神子様で在らせられる訳ですし、光の神の覚えも目出度く、聖王国としても“恩”も有ります」
「成る程? 聖王国側からしたら、見逃す理由の方が有りゃしないのか」
「見逃さないとか、人聞きが悪すぎます。我々は純粋な好意で、お仕えしたいと思ってここに居りますので」
その『好意』って、『信仰』とかって書いて、『こうい』とかって読んだりしませんかねぇ?
『【納得】マイマスターに対して首を垂れようとするその姿勢、評価するに値します』
「はい、ありがたく存じますわ」
ゆるりと笑みを見せるヘンリエッタ王女だが、つまり聖王国に帰る気は全くない、と。まぁ、『返品不可能』とか宣ってたしな。
強制的に帰らせるにしたって、聖王国は遠い。そもそも、ポニテ女騎士も居る上に、旅路の長さとか考えると、絶対に道中脱出して、再び俺の領地を目指しそうなんよね。無駄に行動力が有るって事は知ってるんよ。
「てか、マリエルは全然納得して無さそうだけど、良いのか?」
俺の質問に、頬袋のケーキを慌てて飲み込もうとして喉に詰まらせ、それでも女騎士としての矜持か、吐き出す事だけは踏み止まり、お茶を口に含み少しずつ飲み下して行く。
気ぃ抜き過ぎなんだわ。何で、主人の動向について話してる事を全く関係が無いとばかりに聞き流せるんだか。
「わ、わたしは、今でも反対だ! いくら父王様の命だとしても年端もいかない、それも聖女足られるヘンリエッタ様を特に関係を強化しようとも思っていない国の辺境伯に、側仕えとして送るなど」
「マールだけ、帰っても良いのですよ?」
自分の想いの程を語ったマリエルに、ヘンリエッタは情け容赦ない言葉を贈る。いや、第三者視点から、公平に見た場合、圧倒的にマリエルの意見の方が正しいと思うんだが。
そう言った物を全く意に介さず行動を起こすってぇ所からして信仰に厚いってぇ、事の証拠でもあるんだろうけんどもよ。
「それに……この地に於いても、『闘神降臨』とか言う、随分と面白い事が起きている様ではないですか」
あぁ、闘神降臨もあったな。




