常識ってのはその個人でも違ったりする訳で
またしても寝落ちていました。
遅くなり、申し訳ない。
「正しく相手を追いたいのなら、その情報は正しく集めるべきだと思うんだわ」
「そう、ですね」
俺の言葉に、ピエールが頷く。とは言え、俺の方でもベリアルの痕跡ってか、魔導帝国に撃退されてからの足取りなんざ、分からんのだけんどもさ。
前世で普通の人間を追うなら兎も角、この世界で魔族が本気で隠れたとしたら、その足取りを追うなんて事は不可能に近い。
何せ、奴等、“人間体”なんて、全く別の形態を持ってるから、その上で偽名とか使われれば、全く痕跡なんて物は残すこと無く、生活出来る訳だし、何なら、別に人間の生活圏に潜んでるかどうかすら怪しいからなぁ。
確かに軍団なんて物を持ってるって言っても、その構成員は殆ど魔物だし、そいつ等を開放しちまえば、72の魔族の配下しか残らん訳だし、100柱に満たない集団なんざ、いくらでも隠れる事は出来るだろうさ。
「俺は、【魔王】がベリアルだって事は知ってるが、実際、それ以上の情報は知らないからな」
「そう、なんですか?」
以外だとばかりにピエールが視線を寄越し、神官女性が、不機嫌そうな表情で俺を見る。いや、ハッキリ言えば『散々偉そうな事を言っておいて、それですか』って言う、侮蔑の表情だな。他のパーティーメンバーは流石にそこまでではないが、大なり小なり失望したかの様な表情ではある。
「いや、当たり前だろう? ベリアルを追ってるのはお前らで、俺じゃない。なんで、情報だって特に集めてる訳じゃ無いんだからさ」
「あっ!」
むしろ、特に情報収集すらしてない俺よりも、持ってる情報の少ないおまいらに、問題があると思うのだがね。
流石にこれには、ピエールも、そのパーティーの面々も気拙い顔になる。
この場合、俺が偉そうと言うより、ピエール達が常識に疎いって事な訳だしな。
「さっきも言ったが、魔導帝国のギルド長やら、皇帝とまでは言わなくてもそれなりの地位にいる相手に話を聞くとか出来るだろう?」
それに、クロニクル帝なら、なにか情報とか仕入れてそうだし。俺と違って。
「そもそも、クロニクル帝が帝国内で暗躍していたベリアルの企みを潰した事で、開き直ったベリアルが宣戦布告を行ったってのが、あの事件の発端な訳だし、取り敢えず、そっちの方から情報を集め始めた方が良いだろうさ」
とは言え、事件から結構な時間も経ってるし、どこまで追えるかは分からんのだけども。そんな俺の発言に、ピエールが驚いた様に声を上げる。
「え? そうなんですか!?」
「そこからかよ」
情報を集めてないにも程があるだろう。
ああ、成る程。俺にとってベリアルの事は、数ある魔族絡みの事件の一つに過ぎないが、ピエールにとっちゃぁ、【魔王】の事件が全てで、諸悪の根源って事なんだろうな。だからこそ、騒ぎがあれば、それはベリアルの仕業だろうから、それを解決して行けば、自ずと【魔王】へと辿り着くとか思ったのか。
いや、この世界、それ程単純じゃねぇからな?




