おはなしを始めます
領主館の応接室。ゆたっりとソファーに座る俺の前には、ちょこんと言った感じで対面のソファーに座るピエールと愉快な仲間達。
冒険者ギルドで会った時は、もう少し自信に満ち溢れてるってか増長してる様な感じだったと思ったんだが、やっぱり相対してるのが貴族って事で、緊張とかしてるのかね?
って言うか、俺なんざ冒険者上りで成り上がり者なんだから、そんなに固くなる必要とか無いのになぁ?
『【苦笑】血筋は血統証が付くほどに真っ当な貴族筋で、その上王族の血が入って居る訳ですけれども』
うん、ちょっと黙ってようか。
『【嘆息】どの道【念話】は、向こうには聞こえませんよ?』
俺がツッコみたくなる。
『【了解】分かりました』
視線すら交わさぬやり取りなんで、ピエールパーティーの面々は気が付いて居ない様だけんども、家の面子は察してるみたいで『何やってんの?』的視線がこっちに。いや、本当に俺のパーティーメンバーって、どうやって俺の思考を読んでるんだか。
いや、ネフェル王女以外だが。
ピエール一行に相対してるのは、俺とネフェル王女の二人。いや、イブはいつもの様にメイドとして給仕してるし、ファティマは背後で護衛の構え。
それと足元にミカとバラキが居る。
ラミアー及びセフィと、ティネッツエちゃんは隣室で待機して貰ってるがね。流石に、ちょっと真面目なお話しようって所で背中にやお腹に張っ付かれたり、ソファーでゴロゴロされるのもなぁ? なら端っから存分にゴロゴロしててくださいな、隣部屋でって事で。いや、ティネッツエちゃんは違うけど。彼女は単に退屈な話に成るからって意味でね。
確かに人の言葉の嘘を見抜ける彼女が隣に居れば、色々と安心できるんだろうが、ピエール達相手にそこまで警戒するのも馬鹿らしいし。
で、ラミアーにしろセフィにしろ、空気は読んでくれる魔物なんで、この提案は素直に受けてくれた。まぁ、隣部屋だし、応接室の様子は分かる様に成ってるしなぁ。
それは兎も角、俺としてはピエール達がベリアルを追って居るってぇ状態はもろ手を挙げて歓迎するってぇ訳じゃぁ無いが、全面否定するって程でもない。
やるんなら応援出来ますよってぇ感じ。俺達を巻き込まないならってぇのを前提条件として、だが。
緊張した様子のピエールパーティーの面々を前に、俺はおもむろに話を切り出した。
「さて、ギルドでも言ったが、お前等の言う【魔王】の事だが、アレはベリアルってぇ魔族なんだそうな。これに関しちゃ、俺は、魔導帝国皇帝のクロニクル帝からじかに聞いてるから、間違いないんよね」
「……はい」
ピエールがやや硬い感じで返事をする。
情報そのものはクロニクル帝から口止めされていない限りの事は話したってかまわないだろうとは思う。当然だが、俺が黙っていてくれと頼んだ竜種討伐の真相は話さんがね。




