Q&A
「そもそもの話、【魔王】ってのがどういった存在なのか分かってるのかね?」
「え? それは、だから……【魔王】では?」
言っちゃぁ何だが、ベリアルは自称【魔王】だから。特にベリアル国とかって国を持ってる訳じゃ無いから……持って無いよな? ベリアル国とか聞いた事ないし。
国が無い以上、“王”と言う存在には成らない訳で、とどのつまり、何処まで行っても、ソレは自称でしかないと思うんよね。
国ってのは確か「国民」と「領土」と「統治機構」が必要なんだっけ? 確か沈〇の艦隊で、そんな事言ってた様な気がする。
『【補強】「永続的住民」「明確な領域」「政府」及び「他国と関係を取り結ぶ能力」と他国家からの「国家承認」が必要な筈です……沈〇の艦隊がどうの様な物かは知りませんが、私、気になります』
この世界ではその五つなのかな? そう言えば、俺の前世でも近代以前は既存国家からの承認が必要だったとか聞いた事があるな。
そう言う意味では、誰も知らないベリアル国ってのは“国”としても成立してない訳だから、『無い』って事で良い様だとは思うんだわ。
なんで、国の無いベリアルは、結局の所、自称王様でしか無いんよね。それも大部分の魔族からも認められては居ないであろう、ね。
「【魔王】と称して居たのはベリアルと言う魔族だよ。これは魔導帝国のクロニクル帝から聞いた話なんで間違いはないと思う。つまり、【魔王】を討伐したいってんなら、このベリアルと言う魔族についての情報を集めなきゃいけないってぇ事だな」
「ベリ、アル? 魔族!?」
【魔王】ってぇ存在よりも驚くの、魔族の話なんね。魔族の王を称しての【魔王】じゃ無かったんなら、何を以てして【魔王】だと思ってたんじゃろか?
「そ、そんな話、初めて聞きました!! それは本当の事なのですか!?」
絶句してたピエールの代わりに神官の女性が、そう声を荒げる。その周囲のピエールパーティーの女性陣がギョッとした感じで、神官女性を見る。
まぁ、言ってる事は『あなたの話なんて信用できません』って言ってるも同然だしな。神官女性がどの程度の地位に居るかは分からないけど、司祭ってぇ立場までは行って無いだろう。言っちゃぁ何だが、神官女性って言ってるのも、見た感じ、そんな印象だってぇだけの事だから、本当に神官職についてるってぇ訳じゃ無いだろうし。
そもそも、この世界の教会が、国とどう言った関係なのはイマイチ理解して無いけど、少なくともこの国では権力として貴族と渡り合えるって程、発言権は強くない。聖王国位に成れば、また別なんだろうけど。
なんでこの娘さんの実家が貴族として良い所じゃ無いんだたら、結構な問題発言なんよね。
「逆に言えば、俺のこの話の裏すら取れない位には情報を持ってないってぇ事だろう?」
そう言うと、神官女性も『うぐっ』って感じに言葉を詰まらせた。
「【魔王】の脅威こそ知って居るものの、【魔王】って存在がどう言うもので、そもそも、どこの誰かも分からないってのに、闇雲に探していたって、探し出せるってぇ物じゃないだろ?」
「だ、だが、そう言った騒動を起こす存在なのだから、騒ぎの起こっている場所を探せば、手掛かり位……」
「ああ、だから、家の領地に来たのか」
多分、この間のフィニクスの騒動を聞きつけたってぇ所なんだろう。まぁ、思ってたよりは考えなしってぇ訳じゃ無かったが、やはり、考えが足りてないってのは正しかったな。
フィニクスとベリアル。同じ魔族ではあるしなぁ。




