情報、鮮度が命
「あの、差し出がましい様ですが、何故、とお聞きしても?」
それまで黙って成り行きを眺めていたヘンリエッタ王女が、そう尋ねる。
いや、王女さんや、あんた俺の立場知ってるじゃんよ。まぁ、良いけど。
「その前に1つ、自己紹介を……私はオーサキ辺境伯領、領主、トール・オーサキ辺境伯だ。今日はギルドマスターに用があって参上した」
俺の名乗りを聞いたピエール達が動揺する。まぁ、分からんでもないが、名乗りも、名乗らせもしなかったのはそっちの方だからな?
後、ファティマからの視線が痛い。本来なら身分を隠して、冒険者達に喧嘩を売らせる算段だったからな。それで叩きのめして、その後身分をセンセーショナルに明かして、『あ、あれが辺境伯だったのか!!』『なんやて!!』って方向に持って行くってぇ予定だったんだけど、しょうが無いじゃん!! このままだと絶対拗れそうだったんだから!!
『【進言】『【ドラゴンスレイヤー】の』が抜けています。マイマスター』
あ、そっち? いや、その位なら、知ってるかな? と。ほら、そもそも、この領自体、ドラゴンスレイヤーの功績で貰ったってぇ建前じゃんか!!
……いやまぁ、さっきのピエール達の反応見ると、知らない連中も居そうなんだけんどもよ。
「ド、ドラゴンスレイヤー!!!!」
って、やっぱり分かって無かったんか~い!! ドラゴンスレイヤーだと知って、俺の事をまじまじと見るピエール。
神官女性の方は真っ青な顔に成ってるし、その他のパーティーメンバーもちょっと焦り顔。
まぁ、こんな所で、領主な竜殺しに出会うとは思わんよね。
でも、出会ってしまったんよ。ある日森の中で!
「さて、名乗った事でも分かって貰えたと思うけど、俺は無期限に、この領地から離れる訳にはいかんのよ」
「あ、はい」
貴族な上に、ドラゴンスレイヤーだと聞かされてしまった所為で、無駄にギルド内に緊張が走っちまってるわ。
「そもそも、ピエールだったっけ? あまり【魔王】の情報を掴んで無いよね」
俺がそう言うと、ピエールの顔色が、少々悪くなって行く。
……図星だったみたいだな。
とは言え、ベリアルのヤツ、何の活動もしてないっぽいんで、情報が手に入らないんは、しょうがない事だとは思うがね。
下手すりゃ、【魔王】であるベリアルが【魔族】だって事すら知らん可能性だってあるな。コレ。




