実は居ました
「ボクは見たんだ!! 【魔王】の軍勢を!! あの悪夢のような光景を!!」
ピエールさんね、あの魔導帝国のベリアル軍団との対決の時、参加してたらしいんだわ。で、あの時って、俺、竜種の方の対応で帝都の方へ行ってたから、ベリアル軍と直接戦って無いんよね。
で、その時の戦いは、魔物の軍団対、帝国軍&冒険者連合……って言っても、この連合は連携って物はなく、帝国軍は基本タンク役で、相手を受け止めるのに終始し、冒険者連中が特攻と遊撃って感じで動いてたらしいんよね。
ただ、言っても8000規模の魔物の群れ、連合軍は結構な劣勢だったらしいんよね。
屈強な魔物達の攻撃、強力なユニーク個体の猛攻で、参加してたピエールも、何度も命の危機に瀕したらしい。
ただ、何故か魔王の軍勢は、途中で指揮系統が乱れ出し、その隙を突く事で、何とか押し返す事が出来たんだとか。
ただ、その時に魔物の死体はそれなりに居たらしいんだけど、ユニーク個体の死体は発見できなかったらしいから、【魔王】を含めた強力な個体は逃してしまったんだと思われるそうなんだわ。ってか、確実に逃げてるよね? そいつら。
……で、多分、これアレだよね? 皇帝と魔導帝国軍の一部の皆さんがベリアル撃退したからだよね? ベリアルって強力な【テイマー】だったそうだし。
まぁ、そんなこんなで、被害も多く、決して勝利の歓喜に酔えるってぇ状態でもなく、帝都に戻った時、彼らが見たのが半壊した帝都の街並み。
連合軍が、魔王軍と相対している時に帝都の方に現れた、【竜種】によって蹂躙された街の姿だった、と。その時、初めて、自分達が陽動の方に乗せられて居たんだと気が付いたらしい。
まぁ、【竜種】そのものは、皇帝クロニクル達によって、すでに倒されていたそうなんだが。
うん、皇帝、ちゃんと俺がお願いした通りに、情報を統制してくれたみたいやね。
「【魔王】は決して討伐された訳じゃ無い!! 今、どこかに身を隠しているが、その事に安堵できる相手じゃ無いんだ!! だからこそ、ボクは、その脅威を知らしめて、その上で、逃げた【魔王】を討伐しなければいけないと心に刻んだんだ!!!!」
まぁ、あの軍団や街並みを見たってんなら、ベリアルの脅威は肌に感じたんだろう。ましてや、相手にしていたのが囮だった訳だしなぁ。
ただね、切り札であるムシュフシュを失ってる訳だから、早々、行動には出せないだろうと思うんよね。【竜種】ってのが特異な部分も有るけど、ベリアルにした所で、アレの代わりに成る程の魔物とか、簡単に【テイム】出来んだろうし……
『【否定】聞いている限りでは軍団の方の損傷は軽微だったと推察されます』
ああ、再起を図るだけの手勢は居る、と。そう言えば、配下に居る【魔族】そのものは誰一人失ってないっぽいからなぁ。
多分、そのユニーク個体ってのが【魔族】だろうし。うん、【魔族】が普通は出会えないってのは出会っても、そう認識されないって部分も有るんかもなぁ。まぁ、人間体なら兎も角、魔人体と怪人体だと、アレを人の亜種だとは認識できんわな。
てか、ピエール、思ってたより真面目に【魔王】討伐掲げてたわ。




