そして決着へ
寝落ちしそうだったので仮眠を取ろうとしたら朝でしたorz
大変遅くなって申し訳ない。
自分に直撃しない攻撃魔法はマルッと無視して、俺は体内の【プラーナ】を加速、濃縮、精製して行く。
「ワン!」
「ワン!! ワオン!!」
「アオン!!」
「わんわん!!」
「ん!! 【詠唱破棄】【ファイアランス】!!」
魔法攻撃は、地上に着く前にイブの【ファイアランス】で撃ち落とされ、それを抜いて来た物は、ミカが、バラキが、ウリが、ラファが叩き潰す。
「あたしにも活躍の機会を与えろぉ~」
『あたえろぉ』
いや、魔物’sは最終防衛ラインだからな? むしろ活躍しない方がリスクが少ないんだからな? 分かってるか?
っと、気が逸れてた。いかんいかん。集中集中!!
自身の感覚を研ぎ澄ませ鋭敏化する為にも【純プラーナ】を循環させ、濃縮させ、その上で更に純化させる。
『【警告】マイマスター!!』
「分かってる」
俺に向かって来た攻撃魔法をファティマで弾く。俺の背後では、イブを筆頭として、ミカが、バラキが、ウリが、ラファが、ラミアーとセフィが、この街を守ってくれている。
だから、何も心配しなくて良い。
俺は、相手にだけ意識を割けば良い。
活性化する【純プラーナ】によって、俺の五感が常人のソレから逸脱して行く。そして、それをあえて塞ぐ。
“あの時”俺の五感は塞がれて居たにも拘らず『視えて』いたし『聴こえて』いた。ソレを再現する。自身の【魔力装甲】を操作する事で、疑似的に【邪竜】を倒し、【闘神化】した時と同じような状態を作り出す。
今、俺の前にあるのは闇と静寂。しかし、意識を集中させ、更に【純プラーナ】を循環、循環、循環、循環。濃縮、濃縮、濃縮、濃縮。精製、精製、精製、精製……
『【警告】マイマスター!!』
ああ、分かってる。腕が“動き”ソレを弾く。
今までは、満身創痍で極限な状態だった。俺の背中で、俺を護ってくれている人達が居る。その事だけでも俺の精神がここまで平静に成って居られるんだと感じられる。
だから、これまでよりも“見える”し“聞こえる”。
お前が誰かは知らない。だが、小賢しく位置を変えながら、俺達にこの超高高度からの魔法攻撃を行っているのを感じるぞ?
『【進言】マイマスター、露払いは私達が』
そう、ファティマが宣言し、俺の手から離脱すると、それに続きケルブが、オファニムが、俺から分離する。
『【宣言】マイマスターの邪魔はさせません!!』
そう言うと、人型へと変形したファティマが、オファニムを着込む様に【巨大合体】し、分解変形したケルブと、【グレート合体】したのが“視えた”。
え!? 何時の間にそんな機構仕込んでたの? 俺、聞いてないんじゃが!? てか、いきなり【二段合体】!?
『【警告】マイマスター、様式美をすっ飛ばしてしまった事は申し訳ないですが、今は、ご自分の成すべき事を!!』
自分が“視られて”居る事に気が付いたのか、俺が護る事に拘泥しなければいけないって言う前提が崩れたからなのか、俺の方に攻撃が集中し始める。
だが、それは、二人と【合体】したファティマがその全てを弾き飛ばす。
そして、俺に激を飛ばすファティマ。
っつ、そうだった。今はこっちに集中!!
自身が“拡大”した様な感覚。いや、感覚だけではなく、実際に俺の纏っている【魔力装甲】自体が拡大しているのかもしれない。
俺は、俺自身が巨大化して居る様に感じられているが……
「トール、様、護る」
「ワンワン!!」
「アン!! アオン!!」
「ワオォォン!!」
「わんわん!!」
「さいこバーリアァ~。傷つけさせないよぉ~」
『お~、“つかんだ”みたいだねぇ』
皆の声が“聴こえ”る。
標的が『街』から『俺』へと変わった事で、皆も、ファティマのフォローへと入ったらしい。
意識を超高度に居るソレへと集中させる。
恐らく魔族であろうソレ。その周囲には干からびた様な“何か”の残骸が感じられる。
もう一弾、魔法攻撃が来る。その瞬間、ソレに接続されていた“何か”が干からび、廃棄され、別の“何か”が接続される。
成程、そうやって連続攻撃を可能にしてたのか。
俺を倒す為に、随分準備してたみたいだな。けど、それも無駄になった様だぞ? 俺の家族たちによって、な。
今も、俺を護る為に尽力してくれている家族を意識する。
その後、攻撃し、移動しているソレへと意識を集中し、俺は両腕を前方へと軽く伸ばした。と、両脇の下から背中部分から伸びていた【エクステンドキャノン】が前方へと展開される。
延長展開変形した【エクステンドキャノン】の、その露出した『グリップ』部分を握り『トリガー』に指を掛けた。
自身の【プラーナ】で形作られ、意思によって制御できるってのに、何でこんな機構が有るんだかって気もするが、多分、コレは、俺の無意識の『意思』と『覚悟』の具現だ。無意識化で、この“暴力”を使わない様にする為の制御装置。
これを使う時は、自身の『意思』によって行うと言う『覚悟』。
家族に守られながら、【純プラーナ】を練り込む。俺から発せられる【オド】の変化を感じたのか、ソレが慌ただしく動き、最早位置を移動するのも止めて、ひたすらに攻撃魔法を連射する。
だが、無駄だ。俺を傷つける事は、俺の家族がさせない。
充分に【純プラーナ】が【エクステンドキャノン】に充填される。俺は、最早、怯えさえ感じられる挙動のソレに、意識の照準を合わせ『トリガー』を握り込んだ。
「!!」
「ワン!!」
「アオン!!」
「ワオ―ン!!」
「わんわん!!」
「おおぉ~!」
『た~まや~』
【エクステンドキャノン】から放たれるのは【プラーナ】の奔流。最早、質量さえ持ったその【光】は大気を切り裂きながら、光速でソレに到達する。
恐らく、向こうから見れば、光ったと思った時には、自身の身体の全てが飲み込まれた筈だろう。
【エクステンドキャノン】からの奔流の反動を背面及び脹脛にある噴射口で抑え込む。
その奔流が消滅した後、俺の感覚からもソレは消滅していた。
文字通り『消滅』したのか、それとも『逃げた』のか……
「あ」
『【疑問】どうしました、マイマスター?』
俺の目の前で浮遊するファティマが小首を傾げる。
「そう言えば、俺、アレの顔も名前も知らんや」




