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留められぬは人の欲なり

 ひとまずグループ的には4グループに分かれての探査って事になった。俺やイブ、ファティマと犬達のグループとゴドウィン候と聖槍、兵士達のグループ。

 聖剣と兵士たちのグループと、聖弓と、同じく兵士たちのグループだ。


 瓦礫を除去しつつ先を確認する。……何だろ、俺の考えてたダンジョン攻略ってこう言うのじゃ無かったんだがな。

 各グループが相互的に情報を確認しつつ、塞がれた通路を再び開通させてゆく。補強が必要そうな場所は、木材を持って来てもらって、補強しつつ先を目指す。土砂の時ならガブリが率先して穴を掘って行くんだが、流石に瓦礫はそうはいかない。

 持ち出せる大きさにまで砕いて、兵士の人に運んでもらう。


 ……これ、鉱山夫に助力頼んだ方が良くね? もしくはドワーフ。

 土木作業も兵士の重要な仕事の一つだって話もあるが、少なくともここに来ている兵士諸君は、土木作業の経験とかなさそうなんだよな。

 なんか、そもそも土塁とか作ってなさそうだし。

 あれって、銃や大砲なんかが出てきた後の陣地のつくりだったか。


 魔法なんて、大砲にも匹敵する様な攻撃手段があるんだから、採用しててもおかしかないと思うんだがな。まぁ良いけど。


 ガッツンガッツンと岩を砕き石を運び出す。なぁ、これってやっぱダンジョン攻略じゃないよな? 鉱山夫の仕事だよな?

 そんな感じでも、ファティマの機嫌はそれほど悪くは無い。どうやら俺が彼女を使ってるってシチュエーションが重要らしい。武器と言うより、ピッケル扱いだがな。

 オファニムの方も、砕き飛び散る破片から俺を守ってるって事でご機嫌な雰囲気を伝えてくる。こっちに関しては戦闘だとか違うとかどうでも良くて、“俺を守る”って事が存在意義(レゾンデートル)らしいやね。

 元々俺に対し好意的な存在ではあったが、甲斐甲斐しく手間をかけた事で随分と懐かれたらしい。


 いや、俺の方も二人には感謝しかないんだがね。


 それはともかく、暗い遺跡の中で灼熱色の斧を振るう漆黒の鎧。その姿は正しくピッケル大魔王!! はい、ごめんなさい。俺の中のオヤジ回路がががががが……

 そもそもアレ、鎧なんざ着てない上に無手だし緑色だし。


 イブと犬達は、俺の後ろで破片とかをモッコに運び入れている、ミカとバラキ、セアルティは何か分身してやがるし、ウリを筆頭にガブリとラファが赤く染まっている。

 雄チーム、全員が身体能(フィジカルエ)力向上(ンハンスメント)、習得してやがるんか。

 むしろ雌チームの分身は何なんだ?

 ウチの犬達の謎進化に慄いてると、イブも【魔法】の【身体強化】を使いながら頑張ってくれている。


 うん、俺が泣き言いってる場合じゃないよな。

 やれる、やれるよ!! 止めちまったらそこで終わりなんだ!! 諦めるなよ!! もっとやれる、頑張れるよ!! 俺が異世界の富士山だ!!!!

 よし! ポジティブになった!! さて、頑張りまっしょい!!!!


 ******


 そんなダンジョン攻略も既に3日目。予定通り下へと進んでいる訳なんだが、下に行くほど埋まってる通路が多い。

 流石にこれ以上は素人じゃ負担が大きいって事で、エリスが鉱山夫を雇ってくれた為、俺達は穴掘りからは解放されたんだが、今度は鉱山夫の護衛って事になった訳だ。


 ここまでで、何カ所か“扉”に遭遇したんだが、取り敢えずは一旦スルーしてる。下手に入って藪を突いて蛇を出す事態に成ったら敵わんからな。

 このまま、無事に受付まで行ければ良いんだがね。

 まぁ、そう上手くは行かんだろうが。


「うわあああああああ!!!!!!」

「た、助け!!」


 ほらね。

 俺は急いで悲鳴の上がってる場所へと向かう。

 正直、心情としては放っといても構わんだろうくらいの気持ちなんだがね。

 尻もちをついてる抗夫と動く像の間に割り込み、ファティマで、像の拳を受け流す。


「ほら、とっとと逃げろや」

「ひ、ひい!!」


 腰を抜かしてるのか、ズリズリと後ずさるだけの抗夫や、四つん這いになりながらアワアワと進んでいる抗夫達を見て溜め息を吐いた。


「ウリ! ガブリ! ラファ! 頼む」

「「「オン!」」」


 三頭が身体能力向上を使い、抗夫達の襟首を咥えて走って行く。

 さて、問題なのはガーディアンと化した像の方か。これって、どのくらいで落ち着いてくれるんじゃろ?

 下手に反撃して撃退なんかしたら、他のガーディアンが集まってくる挙句、そこに配置された“扉”が使用不可能になる。全くよく考えられたシステムだよ。


「ファティマ」

『【予想】恐らく守備範囲があり、そこから離れれば攻撃は止まるかと』

「了解っと」


 拳を弾いて距離を取り、動く像が追って来なくなるまでバックステップで間を開けた。

 しばらく、像はこちらの様子をうかがってたが、近づいて来ないと判断したのか、元の位置まで戻っていったわ。


 ******


「ばっかもーーーーーーん!!!!!!」


 鉱山夫を取り仕切る親方に殴り飛ばされ、抗夫が吹っ飛ばされる。

 今回の事は、その抗夫が、勝手にお宝を探してウロチョロしたが故に起こった事だからな。

 これが、掘り起こしてるときに偶々遭遇したってんのなら、まだ庇ってやれん事も無いんだが、コイツ、“扉”には近づいちゃいけない。像が有ったらこっちに報告を入れて、近づくなって警告を無視して、“扉”の向こうにはお宝があるだろう。これだけ苦労してるんだから、ちょっとくらいくすねても問題ないだろう。なんて自己中心的な考えで像に寄ってった挙句、他の抗夫を危険に巻き込みやがったんだ。


 人数が増えれば、統制なんてものは途端に取りづらくなる。何故か、これだけ人がいるんだから自分くらい勝手をしても大丈夫だろうとかって考えてな。

 労働に対して対価が安いって思ってる様な輩なら特にだ。

 それ以前に、それだけの人数が必要だと考えた理由を考えてくれって思うんだよ。雇った側からすれば、サボって勝手をする輩なんざ想定に入れるわきゃないんだからよ。


 ここがどれだけ危険な所だか分かってないってぇか、そもそも坑道なんて危険以外ない場所でずっと働いていたせいか、少し掘ったら通路があるような場所なんざ、それ程危険がないなんて勘違いするのも分からんではない。


 だからと言って気を緩めてるなんてもっての外だし、自分の利益だけを考えて他人まで危険にさらすなんざ、仕事人としてあっちゃならん。


「親方、そいつ出禁な」

「おう、当然だ」


 なんか「嫁が!!」とか「ガキが産まれて!!」とか喚いてるが、そう思うならむしろ誠実に仕事をするべきだったんだよ。そうでなくとも、この依頼、規定より高い賃金を払ってるんだからさ。

 危険な場所で、下手すりゃ巻き添えがあるって想像も働かせられない輩の護衛とか、正直、俺はごめんだ。

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