公爵邸に戻ったよ?
「わ、わたくしも参加した方が良いのでしょうか?」
「いらん、いらん」
ケモミミをピコピコさせながらそう言ったルティシア嬢の言葉を口だけで否定しておく。
無事釈放されて公爵邸に戻った俺を待ってたのは、家族の熱すぎる抱擁だった訳で。
右から抱き着くイブと、左に寄り添って来るティネッツエちゃん。後ろからのしかかるのはラミアーで前から引っ付くんがセフィ。ファティマだけは後ろで控えてるけど。
ミカとバラキが足元で体を擦り付けて来るのは、もはやいつもの事なんで。
「師匠! 私も、抱き着きたいのですが!!」
「やめれ」
『抱き着きたい』て何よ。そもそも、おまいは王女だってぇ自覚をもうちっと持とうぜ? ネフェル王女さんよ。
ただでさえ、立場的な事もあって、色々と周囲の評価を気にしなくちゃいけない身分なんだと言う自覚が欲しい所だわ。
とは言え、何時までもこの状態だと話に成らん。
「もうそろそろ、放してくんね?」
「「「『やっ!』」」」
間髪入れずの否定に嘆息する。いや、気持ちは分からんでもないんよ? 例え冤罪だとしても、いや、冤罪だと分かって居たとしても、その国の最高権力に近しい相手に取っ捕まっちまった訳だからなぁ?
まぁ、それでも解決して来た訳だし、問題は無かった……とは行けないんですね、はい。
少っしばっかし、能天気な事を考えただけで、全員に半目で見られる。楽観視はいけないよね、分かってます。てか、相変わらず俺の思考を読みやがるなぁ、家の家族達。
いや、ルティシア嬢も、そんな目で見るのね。何と言うか、俺の知り合った女子、全員が『ジト目』スキルを手に入れてるよね? なぜか。今は苦笑しているネフェル王女も、その内取得するのかね? 『ジト目』。
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王城の方に行ったのはイレギュラーの事なんで、さて、これからどうしたもんかね? って感じ。
『【確認】馬鹿騎士を連行するのでは?』
その予定だったんだけんどもさ。未だに入国の許可が下りていない上に、父王さんの話からすると小国群の混乱も、黒幕の魔族の陰謀の可能性が高いって感じだからなぁ。
その上、戦乱が長引いてるのは、聖王国の貴族がちょっかいでしてる所為っぽいんで、つまりは父王さんが、この混乱をどうにかしないと、身動きが取れないってぇ事でもある。
「現状だと、何時、入国許可が下りるか分からんのよね」
『【納得】確かにそうですね』
ルティシア嬢の所に来るって事で、前倒しで書類仕事は終わらせて来たけど、だからと言って、いつまでも留守にして送ってぇ訳にも行かない。特に書類の最終判断は俺がしなくちゃいけないし、その為の認可印は俺が持って居るからな。
実際、充分休養は取れているんで、領地に戻っても良いんだけど、そうなると、馬鹿騎士を如何するのか? ってぇ問題も有る。
流石に、このまま放置ってぇ訳にも行かないんだが、また領地に連れて帰るのもどうだろうって感じなんよね。
本当に、どうしたもんだろ?
なんだかんだ言って、結局、面倒な事になるなぁ。馬鹿騎士は!!




