氷山の一角だとは思ってる
思考を纏めるのに時間が掛かってしまいました。
遅くなって申し訳ない。
「悪意ある噂が、出回っておる様なのです」
「……それは、後継者争いの?」
「ご存じでしたか」
ご存じでしたかも何も、俺がってかルールールー達が集めてくれた情報の中に一番目立つ感じであったのがソレだしなぁ。
ただ、現状見る限り、この父王さん。だいぶご健壮そうなんで、今すぐどうこうって感じじゃ無いんだが、ただまぁ今後どうなるかってのは分からんからなぁ。縁起でもないけどさ。
いや、今回の事に魔族が関わってんなら、普通に暗殺どころか下手すりゃ戦争に巻き込んだ上で殺害とかも有るんだろうけんども。基本、彼奴らに倫理観なんてもの無いし。
何か、そう考えると、隣の小国群で戦争が長引いてるのも計画に組み込まれてるのか? ってぇ気がして来るわ。何せ、長引いてる原因の一つに聖王国の干渉が有る訳だしさ。
とは言え、別にこの機会に小国群を併呑しようって感じじゃぁ無く、積極的干渉派の方は武器やら食料やらの軍事物資を供給して、恩を着せる風にしての影響力の拡大だし、消極的干渉派の方は戦争によって焼け出された民衆の援助や支援と言う方向で動いているようなんだけんどもさ。
で、ルティシア嬢、つまりはオルネスティア公爵家は消極的干渉派な訳だ。ヘンリエッタ王女? 知らん。聞かんかったし。ただ、あの態度からすると、不干渉派ってぇ所じゃないかな? いやまぁ、知らんのだけども。
それでも『これを機に!!』とかって攻め入ろうとしないだけマシだとは思うけどさ。実際、そう言う内戦で国力が下がってる内に攻め入るのって、隣接してる国の常套手段って所が有るし。
もっとも、積極的干渉派は、これを機に小国群での影響力を強めようとはしてる訳なんよね。ただ、こいつも自分達のって言うより、『光教会の』ってぇ感じなんだけどもさ。
その辺は宗教国家所以と言う事なんだろうかね?
ただ、その積極的干渉派のやり方がなぁ。例えば勝馬の尻に乗るってか、『この上級騎士に勝たせたい』とか思ってる騎士に肩入れするってより、兎に角、有力そうな騎士に援助をしているって感じなんよね。だからこそ、小国群内のパワーバランスが中々崩れなくって、戦争が長引いちまってるってぇ側面も有る。何と言うかやってる事は"死の商人”って感じなんだが?
「その事もなのですが、決して、この国の総意と言う訳ではないのでございまする」
「はい? 実際、それで影響力を強めてるよな?」
「実は、その支援自体は許可をしているのですが、それも天王に対して行っているだけですので……それも、出来るだけ国内を早目に平定して貰う為に、と」
「え? じゃぁ、各領土の騎士に分配してるのは天王って事?」
ただし、その言葉にはゴッドフリードさん、苦虫を嚙み潰した様な表情に成った。
「もしかして、ソレ名目で輸出をしてるのにも関わらず、小国群に入ったとたんに、各貴族が自分達の判断で自分達の推しに貢いでるって事か?」
「はい、ただし、名目上では確かに天王殿へと届けられて居る様なのです」
なんだそりゃ。
「それが分かってるのに、処罰はしていないのか?」
「いえ、実態はそうだと思われるのですが、各貴族に確認しても『そのような事実はない』と言う返答しか」
聞いてる限り、数字上はちゃんと支援されているって事に成っている訳か。
「それはまた、随分と堂々とした密輸だなぁ」
「お恥ずかしい限りです」




