聖王国の問題
「何者かが、この国を影から侵略しているのでございまする」
「……はい?」
「何者かが、この国を影から侵略しているのでございまする」
「あ、はい」
父王さんが語った聖王国の【問題】ってヤツが、ちょっと思ってたのと違くて、反応に困る。
ただ、そんな事をする様な存在なんざ、俺の知る限りでは一種族しかない。いや、種族と言うのもまた、ちょっと違う気もする一集団なんだが。
「魔族、か?」
俺の呟きにゴッドフリードさんが大きく反応をした。いや、俺が思い付けるのが魔族しか居なかったってか、ここ最近、迷惑を掛けられてるのが魔族しか居なかっただけなんだけどさ。
もしかしたら、他国の工作員の可能性だってあった訳なんだし。ただまぁ、このゴッドフリードさんの反応で、魔族説、濃厚に成っちまったわ。
ただ、彼自身、ハッキリとした証拠ってヤツは持って無いんだろう。何となく、そんな感じだと言う感触は有れども、決定打に成る様な“何か”は見つかってない、的な?
「流石は神御子様。その者等をご存じでしたか」
「まぁね」
ご存じどころか、何度かやりあってるし、何なら家の領地に滞在してるのが一柱居るんじゃが? まぁ、そこまで言うつもりも無いが。
「最近、色々と縁が有ってね。何度かやりあってはいる」
「おお!! 既に、歴史に残すべき功績を幾つも重ねられていると言う!! 流石は光の神に愛されし御方!!」
え? 魔族とやりあっただけで歴史に残すべき功績なの!?
あ、いや、冷静に成って考えて見れば、魔族ってのは、伝説に語られる様な神話的住人だったんだっけ?
少なくとも、早々お目に掛かれないレアな存在ではあった筈で、その上で、悪い意味で有名な一群だったっけか。
それこそ、一国を滅亡させてみたりとか。
そう考えれば、むしろ『目の前で敵対行動してるから対処してるだけで、特に話題に出す様な事でもない』的、俺の反応の方が可笑しいんだよな。
ただ、実際、魔族がらみの事件に出くわす確率が異様に多いんよね。いや、幾つかが、俺達の居る大陸じゃぁ、まだ知られてすらいない大陸での出来事だって事を考えれば、もしかして、魔族達は、今までもどこかで活動はしてはいたけれど、情報が入ってこないって事も有って、そうとは認識できていなかった。もしくは、そう言った話を聞く機会ってのが無かったってぇ事の可能性も有るか。
何せ、そう言った混乱の中に行き交う【オド】は、恐らく魔族にとっては最上級の御馳走な訳で、それはすなわち、食事の為だけにそんな行為を繰り返してたとしても可笑しくは無い筈だし。
魔人族国の時だって、最初の内は魔族が関わってるなんて、誰も思っていなかった訳だからなぁ。




