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聖王国近代史

「ワタクシは所詮、王の器ではないのでございまする」


 この国の問題を解決する為に力を貸して欲しいって事で、『具体的な問題』ってヤツを聞こうとしてた訳なんだが、何か父王(ゴッドフリード)さんの自分語りが始まっちまったんだが?

 いや、居たよなぁ、前世でも。こう、小料理屋みたいな所で、後輩に自分語りを始めっちまう様な会社の先輩。

 ……俺の事じゃ、無いよ? いよいよ? そもそも俺、小料理屋とか行かなかったし。

 下戸って訳じゃ無いけど、酔っぱらうのが好きじゃ無かったんで。

 いや、ああ言う所だって、必ずしもアルコール類を頼まなきゃいけないって訳じゃ無いんだろうけど、何となく、“呑み”にってぇイメージが有ってなぁ。


 それは兎も角、ゴッドフリードさんの話す所に依れば、やっぱり彼は、敬虔な光教会の信者だったのだそうな。ただし、公爵家ではあったが、三男だった事も有って、出家して信仰に邁進していたらしい。


 そんな彼が、父王と成ってしまった経緯なのだが、長男次男が相次いで流行り病で亡くなり、彼に後継ぎが回って来てしまった為、還俗しないといけなくなり、その手続きが終わった直後、さらに彼にとっては悪い事に、当時の父王だった男が、彼の兄達の命を奪ったのと同じ病に罹ってしまったのだそうだ。


 ゴッドフリードの兄達が次々と亡くなった事でも分かるが、その当時、その流行病の致死率はほぼ100%。罹患してしまえば死を待つしかなかったらしい。

 つまりは父王様の生存は絶望的。


 父王が亡くなってしまえば、当たり前だが、新たな父王を決めなければいけない。その当時、王子は二人居たのだが、この国の特異性と言っては何だが、その2人の王位継承順位としては同じで、しかし、第一王子は文官肌で、第二王子は武官肌と言った形で、しかも、それぞれに優秀であった為に、その後ろ盾の貴族達が両陣営に付いて、国内は真っ二つに割れてしまったのだそうな。

 その激しい継承権争いの為、暗闘に次ぐ暗闘。政争に次ぐ政争で、国内の政治は荒れに荒れたのだそうな。元老院も、事態の収拾を図るべく、手を尽くしたらしいが、それでも国内貴族の大半を向こうに回してしまうと、流石に、その力は及ばなかった様だ。


 しかして、その結果なのだが、これが、まさかの相打ち。両陣営共に()()()()をしてしまうと言う、なんとも言えない結末だった。


 そしてさらに悪い事に、継承権の有る二人の王子が亡くなった直後、父王様も息子二人が亡くなった事が堪えたのか、二人の後を追うかの様に亡くなってしまった。


 そう成ると、再び宙に浮いてしまう父王の席。そうして、元老院の話し合いにて、最も王家の血を色濃く受け継いだゴッドフリードさんが指名されてしまったらしい。

 流石に、元老院の言葉を受け入れず、政争に明け暮れてしまったが為に、王子二人が亡くなってしまったと言う負い目か、その決定に否を唱えられる貴族は残って居なかった。


 こうして、精々領地経営位しか勉強していないゴッドフリードさんは、本人の意志とは無関係に、父王へと祭り上げられてしまったのだそうだ。


「実家の公爵家は、従弟が養子に入る事と成ったのです。正直、それで家を存続出来るのであれば、兄達が亡くなった時も、その方法で公爵家を継いで貰って、ワタクシはそのまま教会に残って居たかった」

「あ、はい」


 その後は、周囲の家臣や元老院の指導で、やっとこすっとこ、国の運営をやって来たんだそうな。因みに、50人からの跡継ぎを作ったのは、父王さんの意思と言うより、国内の有力な貴族との関係を強化する為に、受け入れざるを得なかったってのが理由であるっぽい。

 その相手を決めたのも元老院で、そうしなければ、国が瓦解するとか言われれば、断るってぇ選択肢は無かったらしい。


 そこまでの事情を話した父王さんは、大きく一つ息を吐いた。


「それで、今この国内で起こっている問題なのですが……」


 あ、うん。問題については、まだだったよね。うん。覚えてた覚えてた。

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